あらためて『攻めのLTアジ釣り』について整理してみた
『攻めのLTアジ』『ライン引き釣法』『喰い芯理論』については、本ブログ、及びYoutube動画の発表以来、お問合せや釣り場でのお声がけなどをいただけるようになりました。
参考動画 : O.F.F公式Youtubeチャンネル
参考記事 : 革命!!速攻のLTアジ釣り『ライン引き』と『喰い芯』とは何だ!?
認知度が高まってきているようで大変有り難く思っているのですが、一部で誤解をされてしまうケースもあるようです。
これは情報不足や発信する情報のわかりにくさに起因する問題。
つまり我々発信側の問題ですから、ここで今一度整理しておきたいと思います。
アジ釣りはライト化しただけで終わって良いのか?
そもそもLTアジとは、130号などの重いビシを使ったアジ釣りを、PEラインの細糸をミチイトに使用することで軽いビシに置き換えた=ライト化したものです。
それまで狙う魚の大きさから見た場合には非常にオーバーパワーなとてもゴツいタックルを使用していたビシアジですが、ライト化により主に40号程度と三分の一以下の重さの道具立てで、とても気軽に楽しめるようになりました。
また、狙う場所も浅場主体に拡がり(水温変化やコマセの影響も寄与していそうですね)、それに伴い船の移動距離も抑えられて午前、午後の半日船含めて乗り合い船の数もグッと増えました。
このように色々なことが良い方向に作用して、今や東京湾ではNo.1の人気と人口を誇る釣りものとなったわけです。
が、そんな人気の釣りものであるにも関わらず、ライト化した、ということ以外に何故かイノベーションが起こらない、つまりある意味では「ほったらかしにされた釣り」だったというのも数年前までの実情です。
とは言え、どんな釣りにも名人上手というのが居るのもの。
特に資源量が多いターゲットでは釣り人の腕の差は、数字として如実に表れてきます。
先に述べた通り、アジは東京湾随一の資源量を誇る釣りものであり、釣り手の数も圧倒的。
そんな中ですから、必然的にトップを張る名人達の腕前は、それこそカワハギ釣りの名人のようなとんでも無いレベルに達しているわけです。
にも関わらずその事実を無視して『アジ釣りはファミリーフィッシングだ』とバッサリと捨て置いていて良いのだろうか?
本来ならもっときちんとした評価がなされ、楽しみ方の幅が拡がって然るべきなのではないか?
工藤テスターの研究され尽くした釣法と理論に出会ったことで、強烈に感じたのはこう言う思いでした。
ライト化によって際立つ攻めの姿勢
アジ釣りがライト化したことで大きく変わったことのひとつが入門時のハードルが下がったこと。
軽いビシで釣りを行えることでロッドの調子選択の自由度が上がり、他の釣りもののロッドが流用しやすく、電動リールが必須だったところが手巻きでじゅうぶんに成立するようにもなって、より気軽にお試しできるようになったわけです。
このあたりのことはLTアジがファミリー向けにピッタリと言われる所以ですね。
が、ここから先がおざなりにされて来た部分。
それは、水深が浅いことで早いテンポの釣りが有効となり、アグレッシブな方向性=「攻めの姿勢」とそこから編み出された多彩なテクニックがより釣果に直結してくる、ということ。
アジ釣りの本質はヘビー、ライトを問わず「数釣り」と言えると思いますが、水深の浅いライトでは特に「回転で稼ぐ」という視点がヘビータックルの時よりも重視されてくるわけです。
この回転を上げることを船釣りでは「手返しが良い」という言葉で表現したりしますね。(※「手返し」という言葉の意味にはちょっと注意が必要なので後ほど解説します)
いかに回転を上げるかが数字に直結してくるんですが、そのためにはよく言われる「○メートルでコマセを振って○センチ巻いて待つ」という動作だけをしていては足りません。
そこで生まれるのが『攻め』の考え方です。
従来の『待ち』を主体に考える釣り方ではなく、アタリを早く出すための『攻め』の姿勢で臨む。
もちろん『待ち』を主体にした方法でも資源量の多いアジはちゃんと釣れてくれます。
程々に釣って楽しむ、という考え方もありますからどちらが良いとか悪いなんてことは絶対にありません。
が、『攻め』ていけば更に回転が上がり釣果は上向くわけで、各宿でずば抜けた数字を出している名人たちは、表現の差はあれど必ずこの姿勢を持って釣りをしているのは事実です。
このように「攻めの姿勢」でアジを釣ることが数を伸ばすことにつながるんですが、では我々が実際にそれを実行するためにはどこから入ったらよいのか?
その入り口を初めて具体的、且つ体系的に示したのが「ライン引き釣法」であり「喰い芯理論」ということになります。
『ライン引き』の効果とそのインパクト故に起こる誤解
ここまで説明してきたように、「ライトアジを攻めの姿勢でもっと楽しもう」ということを提唱しているわけですが、ここでひとつの誤解が起きている感があります。
それは『ライン引き釣法』の独り歩きです。
ライン引きは、釣り方自体がアグレッシブであり、またハマった際の爆発力が大きいことでとてもインパクトが強い。
これにより、攻めのライトアジという枠組みを飛び越えてこの釣法だけが独り歩きしているのではないか。
つまり、攻めのライトアジ = ライン引き釣法 という誤解が起きてしまったようなのです。
ということで、ここで『攻めのライトアジ』について全体像を図にまとめてみました。
図の通り、『ライン引き』も『攻めのライトアジ』という楽しみ方の一部であり、また『喰い芯理論』も同列の方法論です。
もちろん提唱者である工藤テスターもライン引き釣法だけで釣りを組み立ているわけではない、というのは動画でもお分かりいただけるはずです。
参考動画 : 激シブはライン引き釣法と喰い芯理論で攻略できる!!
我々が知らない様々な考え方やテクニックはまだまだあるはずですし、これから構築されてくることもあるでしょう。
ですから『攻めのライトアジ』という枠組みがそのための土壌になってくれると嬉しいと思っているわけです。
ということで、これらの前提を確認した上で、次からは現状我々が釣り方の核としている『ライン引き釣法』と『喰い芯理論』についておさらいしていきたいと思います。
『ライン引き』という方法論を整理する
「攻めのライトアジ」で提唱している中の具体的な方法のうち、非常に釣果の向上を実感しやすいのがライン引きです。
例えば、教科書通りの棚でのんびり待つ釣り方をしていた人に、ライン引きの動作を行って貰った途端アタリ数が増えて連発状態に突入する、なんていうことは非常に多い。
先程述べた通り、この威力の凄さが誤解に繋がってしまったという側面もありますが、裏を返せば攻める釣りとして多くの人が試して最も納得感の得られやすい方法だとも言えるでしょう。
ただ、あまりにもこの釣法の動作、つまり早いシャクリを多用する面ばかりに目が行ってしまうと本質を見失いかねない。
ということでここで少し整理してみたいと思います。
・『ライン引き』 = 『早いシャクリ動作』ではない
『ライン引き釣法』の強みは仕掛けとコマセを早く、且つ高確率で同調させられる、ということに尽きます。
次の図を見てください。
これまでの考え方では、一定の棚でビシを数回振ってコマセの煙幕を作り、それが付餌のところに流れていくことで同調するイメージ。
これはある意味では潮任せとも言えるし、また撒いたコマセは時間経過とともに薄まって行くため、同調する頃には魚の寄りは落ち着いてしまうこともある。
コマセを振ってから間が開いてしまうこともあり、比較的のんびりとしたアタリの出方になりやすいのはこういう理由です。
これをライン、つまり線状に撒いてやりながら同時にその中に付餌を通してしまおう、というのがライン引き。
コマセを振ってその煙幕が拡散する前、つまりなるべく濃いうちにすかさずそこに付け餌を入れるように操作するので、魚がしっかり寄った状態で勝負でき、アタリが出るまでの時間は短縮されていくわけです。
当然、早く掛けられれば回転は上がりますから釣果は伸びやすくなります。
喰いの良い時間に一気に数を稼げるので、非常に有効な釣り方なわけです。
しかし、素早く同調させることと、早い連続的なシャクリが常に同義かと言うとそんなこともない。
例えば潮がとても速い時。
強く早いシャクリを行わずともビシは潮を受け、その水流でコマセが出ます。
ですから、ゆっくりと持ち上げる程度からステイの状態で既にラインが引けており、且つ潮になびいた仕掛けも、ほぼ自動的に煙幕と同調してしまいます。
「ラインを引く」というのは水中のコマセの煙幕の様子であり、釣り人の動作を表しているわけではない、ということですね。
かっ飛ぶような強烈な速潮の時、経験者がいつものシャクリをして全く釣れない状況で、ゆったりと持ち上げ止める、という動作を行っている人が連発する、なんていう状況は、これを如実に表しています。
他の記事にも書きましたが、魚は釣り人の動作を見て付け餌を食べに来るわけではありません。
大切なのはコマセの出方、仕掛け(付け餌)の動きであり、それを演出するためにロッドを操作するということを忘れてはいけません。
・ラインの引き方には2種類のアプローチがある
「ライン引き」はコマセを線状に撒き、その中に仕掛けを通すことを目指すものですが、その際のアプローチには次の二通りの方法があります。
① 均一なコマセのラインを一定の長さで引く『ライン撒き』
ビシを跳ね上げたり段をつけたり、といったシャクリをなるべく避け、均一に線状の煙幕を引く。
均等な線状の煙幕にはアジが均等に寄るため、付け餌との遭遇率が上がりアタリが早く出る。
潮の緩急、活性の高低に関わらず、比較的どんな状況でも安定した効果が出やすい。
② 濃い点を素早く並べて線状にしていく『トゥイッチ撒き』
コマセの煙幕を濃い点状に、且つ複数並べてラインを作るために、 ビシを一点で強く小さく跳ねさせる動作を素早く連続して行う。
濃い点にアジを密集させることで競争心が働きやすく、且つ複数の点を並べることで遭遇率を上げることができる。
潮の無い時間帯、高活性時、密度の高い群れ等に非常に効果的な方法。
いずれもコマセと仕掛けを積極的に同調させていく方法なので非常に再現率が高くなります。
・ライン引きが苦手とする状況
ライン引きが効きにくい状況をひとことで言うと、「低活性時」です。
特に餌を見つけてもなかなか寄って来ず、目の前に来た餌をじっくり見てから気まぐれに食べるような、「やる気が無く動きが遅い」状態の魚を相手にした場合、これが顕著になります。
付け餌の移動が多いとアジが付いて来ないわけですから、それに見合った釣り方にシフトしなければ結果は得られ難くなるのは当然で、単にラインを引いたら釣れるのか?と言われれば答えは「No」となります。
『喰い芯』という概念
『喰い芯』を最も簡潔に言えば「潮の境目」のことです。
つまり潮の流れる向きや速さが変わっている層のこと。
ビシがここを通過すると、それが我々には重さの変化として手に伝わります。
この変化を感じ取り、そこを意図的に狙っていくのが喰い芯の釣りです。
では、そもそも喰い芯を狙うと何が良いのか?
そのポイントはふたつあります。
まずひとつ目は、流れによってコマセが溜まりやすくアジが寄りやすいということ。
言うまでもなく、アジがより多く居る棚、つまり密度が高い層は釣りやすくなります。
もうひとつは、潮の境目は魚の眼からは壁に見えているようだ、と言うこと。
アジの捕食の動作はこの壁の影響を受け、壁の手前で餌を食べた場合、その先に引かれると嫌がって反転する。
これにより針掛かりしやすく、アタリも出やすくなるわけです。
このように、喰い芯を利用して釣果を上げる考え方を『喰い芯理論』と呼んでいます。
「ライン引き」がコマセの撒き方と付け餌の同調のさせ方であるのに対して、こちらはアジの居る場所、喰わせる場所を見つける方法といったイメージですね。
【補足】手返しという言葉の罠
「あの人は手返しが良い」「手返しの速さが釣果につながる」といった話は、船小物の数釣りの世界では非常によく聞かれる言い回しです。
もちろん、釣れる時間に餌付けや魚を外す作業をもたもたとしていてはチャンスを逃しますから、「手返しの速さ」というのは必要なスキルです。
が、ここで気をつけるべきことがあります。
それは、手返しの速さは直接的に釣果の向上には繋がっていないということです。
そもそも一般的に言われる「手返し」が何を指すのかと言うと、「魚を素早く外し、餌を素早く付け、トラブル無く次の投入を行うこと」で「魚を掛ける」という部分には関係していません。
つまり、「手返し」とは補助スキルであり、そもそも魚を一定以上のペースで針掛かりさせない限りその効果が発揮されることはないのです。
これ単体で存在してもあまり意味がないものとも言えるわけで、「手返しが良いからよく釣れる」→「とにかく手返しをよくしよう」というところにフォーカスしてしまうと本末が転倒してしまいます。
まずは、なるべく早くアタリを出して掛けること、すなわち、いち早くパターンを掴むことを心がけていきたいものですね。
まとめ
今回は、多くの方に認知していただけるようになった「攻めのLTアジ」に関して再度まとめてみました。
とりわけ「ライン引き」は道具立てを大きく変えることなく、考え方とちょっとした動きを変えるだけで誰もがすぐに「攻める楽しさ」を実感できる優れたメソッドです。
新しい方法には色々な勘違いや誤解がつきものですので、なるべく丁寧で具体的にわかりやすい説明を心がけ、当ブログや動画、教室の開催などを通じてフォローしていきたいと思っています。
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