ライトアジ釣果倍増計画!!名人の技に深く切り込んでみた。
船でのビシアジ釣りがライト化し始めて既に20年近くになるでしょうか?
今や敢えてライトと付ける必要が無い程、船のビシアジ釣りのメインに取って代わりましたね。
それまで船のアジ釣りと言えば、130号ビシで電動リールとヘビーなビシ竿使用の漁師っぽいイメージでしたが、ビシが40号と圧倒的に軽くなったお陰で誰でも楽しめるファミリーフィッシングとして取り上げられることが多くなりました。
間口が広がることはとても良いことで、年間を通して誰もが気軽に楽しめる素晴らしい釣りになったなぁ、と嬉しく思います。
が、それと同時にこの釣りを突き詰めるマニアックな雰囲気が薄れたような気も・・・・・・
技術が軽視され、名人の技が継承され難くなる一面があるようにも感じているこの頃。
これって、シロギス釣りにも共通しているジレンマですよね。
今回は、そんな流れに一石を投じる意味で、名人から教わったライトアジ釣りの極意を、ロジカルにまとめてみることにします。
ライト化でテクニカル要素が増加
私もそうですが、ルアーやフライ等、ゲームフィッシングから船釣りに入って来た人には、正直言って従来のビシアジ釣りのタックルはオーバーパワー過ぎてちょっと理解に苦しむところが有りました。
もちろん、ヘビータックルだったのには相応の理由があるので否定するものではありませんが、ミチイトの性能がグッと上がってきたこともあり「もう少し何とかできないのかな?」と思っていた人は多かったはず。
そういう意味で、いち早くアジ釣りがライト化したのは必然だったと思います。
そんなアジ釣りのライト化の中で、手軽さ以外に大きく変わったのが、テクニカルな要素の増加です。
細いラインと繊細なロッドを使えば、ヘビータックルではなかなか感じ取れなかった様々なシグナルを見つけることが可能になります。
それを見つけて状況の変化にアジャストし、次々とアジを掛けていく楽しさはライト化したことの大きな効能だったわけです。
名人達が渋い状況でも途切れなくアジを釣っていけるのは、ライト化による効能を最大限に利用してノウハウを蓄積してきた結果。
つまり現在のアジ釣りには、ライトならではの攻めのテクニックが満載なんです。
極意はモタレと重さの変化
ビシアジ釣りにおいて最も重要なのがコマセワークと棚取りであることは言うまでもなく、昔も今も全く同じです。
ではライトになって変わったこと、もっと具体的に言うと楽しくなったことは何かというと、
- アジの引きがより楽しめるようになった
- 拾えるシグナルが増えた
の2点。
特に「拾えるシグナルが増えた」ことは、戦略の組み立てとアジャストが素早く行えるという利点を生みゲーム性を一気に高めましたね。
ゲーム性を飛躍的にアップさせた多様なシグナルの伝達性向上ですが、そのシグナルとは大きく分けると「竿先のわずかなモタレ」と「ロッド操作中に感じる重さの変化」の2つになると思います。
なお、アジ釣りで捉えられるシグナルにはもうひとつ、ブルブルやガツンとくる、いわゆる “普通のアタリ” がありますが、これはアジが餌を咥えて泳ぎ去ろうとして発生するもの。
で、他の釣りでも同じですが、この “普通のアタリ” だけを捉えていては釣果は頭打ちになってしまいます。
とりあえず一旦整理すると、ライトアジ釣りで感じ取れるシグナルは
- 普通のアタリ
- 竿先のモタレ
- 重さの変化
の3つとなります。
なお、アジの口の形状と仕掛けの構造上、カワハギ釣りで言うところの『手感度アタリ』は発生しません。
また、この釣りは40号のビシを宙に吊るして行うため、錘を底に着けてテンションを弛めてラインの揺れを見える化する『目感度アタリ』も出ません。
参考 : 勘違いが多い!?本当のカワハギの目感度を本気で解説
で、これに関してはちょっと注意が必要。
人によっては、重さは手で感じるので『手感度』、モタレは目で察知するため『目感度』と言ったりすることがあるのでややこしくなる恐れがある。
ということで、混乱を避けるため敢えてここでは手感度、目感度の表現は使わないことにします。
モタレと重さのメカニズム
ここまでの前提を踏まえた上で、まずはモタレと重さ変化の発生メカニズムを考えてみましょう。
モタレを端的に言うと “穂先が微妙にお辞儀をする動き” です。
これは餌を咥えたアジがその場からあまり動かない状態で起こります。
逆に、餌を咥えて持ち去ろうとすれば、ブルブルっと普通のアタリとなります。
つまり、活性が低く普通のアタリが出ない ”居食いの状態” が起きるわけで、こうなるとモタレのシグナルを探していくのが正解になります。(探し方は後述します)
また、重さの変化はラインや仕掛け、特にビシが受ける水流の変化を手で感じ取るもの。
重さの変化がある場合は、聞き上げを行った際に初めに竿先がモタレます。
そのモタレの正体を更に聞き上げで確認し、魚では無い重さが加わると「これは水流の変化がありそう」となるわけです。(これが何に役立つのかについても後述します)
ライトアジ釣果倍増のテクニック論
ライトアジ釣りで察知すべきシグナルのモタレと重さのメカニズムを確認したところで、ここからは、名人が意識している考え方とテクニックを解説してみたいと思います。
テクニックその1 聞き上げによるモタレの察知
活性の高いアジは、船長の指示通りコマセを振って棚で止めてやればすぐに “普通のアタリ” が出て、向こうアワセか、少し持ち上げてやることで針掛かりしてくれます。
こんな時には手返し勝負。
どんどん釣ってどんどん仕掛けを入れ替えるだけですから、とにかくマシーンのように釣りましょう!!
ただ、そんな高活性が1日続くことはあまりなく、だいたいは食いが落ち着いていきます。
そうなると指示棚に止めてから普通のアタリが出るまでのインターバルは長くなる。
でも釣る人はここでペースを落としません。
なぜそんなことが出来るのか?
その答えのひとつが、聞き上げによるモタレの読み取りです。
活性の低くなったアジの摂餌行動は、とてもゆっくりになり、場合によっては居食い状態になります。
つまり普通のアタリが出なくなる。
なので、こちらから仕掛けを動かしてモタレを関知していこう、というのが聞き上げの動作です。
当然アジの動きはゆっくりで、餌の吸い込みも弱いので、聞き上げる動作もそれに応じてゆっくりと等速で行う必要があり、緻密なロッド操作ができるかどうかが鍵になります。
この活性の下がったアジは掛けた後もあまり引かず、重くなっただけで上がってくることも多いので、重さが分かりやすいロッドと聞き上げの動作がとても大切。
また、なるべく上に上に釣っていくことで、針掛かりの位置を硬い上顎付近になる様にコントロールでき、取り込みバラシの軽減にもなります。
そんな良いことずくめの聞き上げの動作では、ロッドとミチイトの角度を一定に保ったまま行うことも重要です。
と言うのは穂先とミチイトの角度は、
- 鈍角になれば穂先は曲がらなくなる
- 鋭角になればより曲がりが大きくなる
という関係にあるからです。
ですから、聞き上げの動作の中で角度を変えてしまうと穂先への重さの乗り方が変わってしまい、変化がわかり難くなってしまいます。
具体的には、竿先だけを持ち上げるのではなく、腕全体を使って角度(90度±15度)を保ったまま持ち上げること。
これは地味ですが、他の釣りでも共通する超重要な基本動作で、名人と言われる人達は例外なくこれができています。
参考 : 釣果が安定しない人必見!!基礎固めでこっそり上達!?
逆に、穂先が弧を描いて円運動してしまうと角度は変化してしまいます。
なので、この様な癖のある人はモタレのシグナルを消してしまいがち。
例えば竿尻を脇に固定したままや、肘の位地を固定したまま、肘から先だけを上げ下げする人。
これではモタレが分かり難くなるばかりでなく、穂先の破損もしやすくなってしまいますので、是非この点を意識して改善することをオススメします。
参考 : よく穂先を折る人必読!!ロッドビルダーが教える破損防止法
テクニックその2 潮流の変化を重さで感じ取れ
コマセ釣りの重要なポイントである棚合わせには、先ずは船長の指示を聞くことが大切なのは言うまでもありません。
しかし、釣りを続けているとそこから微妙に棚が変わって来ることが多い。
その際に指標となることのひとつに潮流の変化があります。
この潮流の変化には「全体的な潮の流れ」と、水中のあるレンジにおける「部分的な潮の流れ」の2つがあります。
ひとつ目の全体的な潮の流れは、水面の流れ方とミチイトの向きから想像しやすいです。
それまでほとんど流れて居なかった潮が流れ始めると、目に見えて水面の泡やゴミが流れ始めたり、更に効き出すとミチイトが斜めになったりします。
特にアンカーを掛けている場合は分かりやすいですね。
●全体的な潮の流れ
実は、目で見て分かるほど流れが顕著になる前に予兆が重さとして現れます。
つまりビシとミチイトが潮流に押されて若干重たく感じられてくるわけです。
それを察知したら、コマセの帯の方向と天秤から先の仕掛けのなびき方が変わることが予想されます。
当然、流れがあればコマセは真下から横方向に向かい出す、つまり位置が上がります。
そうなると、アジがコマセにつられて上ずるはず。
また潮が効くと活性が上がることも考えられますから、更に上ずる可能性が高い。
重さから棚の変化を予想し、コマセを振り、仕掛けを同調させる。
この微調整の幅はシビアな時には10センチ単位になります。
と、ここまでは私もなんとなく理解していました。(出来てるかは別として(笑))
●部分的な流れ
そして問題なのはこちらの流れ。
これ、名人に教わったんですが、正直言って最初は?????でした。
まぁ、イカ釣り等では巻き上げ中に潮の変わり目を感じることがあるので頭では理解できるのですが、なぜかアジ釣りではそれを上手く感じ取れない。
でも名人には明確にわかると言うので、道具の差かも?とロッドをお借りしてみると、これが見事にわかるんですね。
ただ、現行でそのような市販竿が無く名人も苦労している、とのこと。
で、ロッドビルダーとしては
「このシグナルを出すためのロッドを開発してやろう」
と燃えちゃったわけです(笑)
※現在(2021年10月時点)はこのロッドのテストをしていて、結構良い感じで進んでいます。
で、この部分的な潮流を捉えると何が良いか?というと、それは
この流れにコマセが集まりやすく、食い棚になりやすいから
です。
テクニックその3 コマセとの同調を秒で行う
先述のような潮流の変化によってコマセの出方、流れ方は変わります。
ただひとつ共通して言えるのは、どのような出方をするにしても、コマセの煙幕はビシを振った直後が最も濃くて良く目立ち、その後はだんだんと拡散して薄くなるということ。
堤防や磯から撒き餌を撒いていると、小魚の群れが一斉に突っ込んでくるのは撒いた直後の煙幕が一番濃い状態で、拡がれば拡がるほど魚も散っていくのがよくわかると思います。
つまり、ビシアジ釣りでもコマセを振った直後の濃い煙幕の中に付け餌を入れてしまうのが、効率よくアタリを出すコツ。
なので、コマセを振ってその場でのんびりアタリを待っているのは、釣れる状態をみすみす見逃していることになるわけです。
で、煙幕が濃いうちに素早く付け餌を同調させる為に何をすれば良いかと言えば振ったらすぐにビシを持ち上げるが基本。
(なお、もちろん応用編もありますが、それは私がマスターできたら詳しく書こうかなと思います。)
ってことで、入門編にはだいたい「1m分持ち上げよう」とかって書いてありますよね。
先ずはこれを素早く行うことが大切。
しかし持ち上げ幅が常に1mとは限りませんから、コマセの煙幕がどう動くのかを潮流から予測して持ち上げ幅を調整する。
これがきめ細かく出来ると早いアタリが取れる様になります。
実はコマセを振った後に止めておく棚が何処なのか?ということよりも、この調整を細かく行うことのほうが重要で、名人が言う「棚が10センチ上がった(下がった)」はこの持ち上げ幅を指していることが多い。
だから単に教えて貰った棚にのんびり止めておいても同じように釣れないんだなぁ、と痛感しました(笑)
なお、棚の微調整には潮流の変化をいち早く掴むことが大切になりますから、ここで “テクニック2” が生きてきますね。
まとめ
ということで、最近改めてその奥深さと緻密さ、そして食味にハマっているライトアジ釣りについて、2束、3束を普通に釣ってしまう名人が何を考えて組み立てをしているのか?について、修行中の私が現時点で理解した部分を書いてみました。
聞いてみれば当たり前の事かもしれませんが、ここまで意識して実証を繰り返してきたからこそ名人の安定した釣果があるんだなぁ、と改めて思いました。
突き詰めた先に見えてくるものがあるってのは、カワハギだってシロギスだって同じことですね。
だから小物釣りって楽しいんだよなぁ。
まだまだライトアジの修業は続きます!!
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