船小物釣り上達の絶対的秘訣!!G.F.A理論とは【後編】
テクニカルな船小物釣りの超基礎として提唱しているG.F.A理論。
前編ではそのうちのG=グリップと、F=フォームについて解説しました。
そして今回は最も重要なA=アングルについてです。
アングルとは角度、つまり竿先とミチイトの角度のこと。
これをしっかりコントロールすることは、仕掛けを意図した通りに操作する為に絶対に必要なスキルです。
なお、前編で解説した内容は全てこのアングルのコントロールを容易にする為のものと言っても過言ではありません。
なのでもし未読の場合には、まずは前編を確認してから読み進めてみてください。
参考 : 船小物釣り上達の絶対的秘訣!!G.F.A理論とは【前編】
アングルが大切な理由
ではまず、なぜアングル、つまり穂先とミチイトの作る角度がそれほど大切なのか?について考えてみましょう。
まず物理的に、ロッドのようなテーパー状の弾力のある物の先端に糸を接続し引っ張る時、その角度を鈍角にすればあまり曲がらず、鋭角にすれば大きく曲がる、というのは感覚的に理解しやすいと思います。
そもそもロッドは穂先で魚のアタリを見える化したり、穂持ちから胴に掛けての弾力で急な引き込みをいなして針外れやラインブレイクを防ぐ為に使用するものです。
以前の記事でも触れていますが、結論から言うと、この機能を一番活かせるアングルは、90度±15度の範囲(都度分度器で測る訳では無いので概ねですが)で、この範囲を大きく外れて使用するのは基本的にNGです。
参考 : 釣果が安定しない人必見!!基礎固めでこっそり上達!?
適正なアングルを大きく外れて使用すると言う事は、逆に言えば、これらの機能を発揮させないように使用するということ。
であれば、極論はロッド不要。
直接ラインを手に持って行ういわゆる「手釣り」で良いということになってしまいます。
105度以上の鈍角がダメな理由
前述の通り、アングルが開けば開くほど、ロッドの弾力は無くなります。
極端な例で言えば、180度ではロッドが存在しないのと同じ状態。
これって、根掛かりを外す時ですよね。
ですから、特殊なシチュエーションを除いて、ロッドは大きく開いたアングル、具体的には105度以上の鈍角にして使うのは間違いなのです。
ちなみに特殊なシチュエーションというのは、柔らかい調子のロッドを使いつつも、ある一定の状況で敢えて弾力を殺して硬い竿の様に使いたい時、または特殊なアクションを加えたい時に、意図的に鈍角に構えて使用することがある、ということです。
例えば・・・・
天秤の太刀魚釣りで、しゃくりの動作のスタート時に竿先を大きく下に向け、アングルを開いて胴調子のロッドの弾力を殺し、キビキビした動きを演出してやる。
例えば・・・・
カワハギ釣りやマルイカのゼロテン釣法で、激しい叩きを行いたい場合。
敢えてアングルを開くことで柔らかい穂先への負担を軽減して、トルクのある穂持ちから胴に負荷を掛けて仕掛けをしっかりと動かしてやる。
といった具合です。
デメリット① シグナルが消える
ラインテンションの変化を見える化してくれるのが穂先のひとつの役割ですが、これには適正なアングルのコントロールが重要になります。
例えば、視覚で捉えるシグナルの中でもテンションが掛かる方向に出るモタレや、逆にテンションが抜けて曲がった穂先が戻るアタリは、大きく開いたアングルでは見える化されません。
これだけで既にモタレと戻りアタリのふたつのシグナルを消していますよね。
ちなみに、横揺れや震え等のシグナル、及びカワハギの手感度なんかは、理論上は鈍角でも出ると思います。
ただそれはあくまで理論上でのこと。
鈍角の構えのマズさはここからが核心部です。
それは、我々が行っているのは船釣りであり、陸っぱりと違い足場が動いているという点。
足場である船は波に揺られて上下動し、潮流・風・船長の操船により流れます。
すると、船の動きに仕掛けの動きが影響を受ける。
分かりやすく言えば、仕掛けが船に引っ張られたり持ち上げられたりするわけですね。
関連 : 気付けばもっと釣れる!!陸っぱりと船釣りの決定的な違い
しかし、適正なアングルで構えていれば上下動にはロッドの上下で対応が容易ですし、引っ張られる動きにもロッド操作で一定の距離を着いていくことが可能になります。
これが、最初から鈍角なアングルに構えていたのでは、船の動きをキャンセルして自分の意図した通りに仕掛けをコントロールすることが難しくなるのがお分かりになるでしょうか?
特に船が波で持ち上がる時と横移動する時には竿先で着いていく余裕がほとんど無いために全くコントロールが効かない。
非常に繊細な穂先で目感度アタリを取っていく釣りものや状況では、船の動きが穂先に伝わってしまえばアタリが消されてしまいますからこれは致命的です。
関連 : マルイカ ゼロテン釣法でお悩みの方必見!!アタリを大きく出す方法
もちろん、非常に微細なカワハギの手感度も同様の理由で消されてしまいます。
更に、アングルを開いて構えていると穂先の弾力が死んでいるため、そもそも仕掛けが少しずつジワジワと引っ張られて動いてしまっていることに気づき難くなる、という悪循環も起こります。
これは、海底に錘をピタリと止めておく必要がある釣りものや状況ではアウトで、横の動きにとても敏感なシロギス釣りではこの差が顕著に現れます。
全くと言って良いほどアタリが出ず、またアタリが出ない理由にすら気付くことができないので八方塞がり、なんてことも。
このように、アングルが大きく鈍角に開いてしまうと、仕掛けのコントロールができず、そのせいでアタリを自ら消してしまうことになるわけです。
デメリット② バラシの多発
魚を掛けた際にアングルを鈍角にしたまま巻いているとバラシが発生する可能性が上がります。
特にこのデメリットが分かりやすい釣りものが湾フグです。
この釣りの仕掛けは、フグを掛けるカットウ針の僅か10数センチ上に錘がある、というシンプルなもの。
直上に錘が有るが故に、掛かったフグが首を振って暴れるとそれによって錘も大きく暴れ、これが更にその上のラインの弛みに発展します。
特に湾フグ竿の調子は胴が余り曲がらない先調子ですから、このままではカエシの無いカットウ針は簡単に外れてしまう。
いわゆる巻きバラシが多発するんですが、ここでアングルの適正化が生かされてきます。
しっかりアングルをコントロールして竿の弾力、特に穂持ちから胴部分の弾力をしっかりと生かしてやれば、この余計な弛みを抑制しバラシを防ぐことが出来ます。
逆に言えば、湾フグで何度も連続で巻きバラシをするのは、アングルが大きく鈍角になっているのが原因であることがほとんど。
巻き上げ時の適正なアングルコントロールができていれば、実はそれほど巻きバラシが多い釣りものでは無いのです。
また、似たような仕掛け構造(掛け針と錘が近い)の鯛ラバやひとつテンヤにも同様の状況が存在します。
これらの釣りでは錘を誘導式にすることで、魚が首を振ると錘が掛け針からどんどん離れていくようにしてバラシ対策をする方法もとられていますね。
と、少し話が逸れましたが、つまりはアングルを大きく鈍角に取っていると竿の弾力が消え、そのせいでバラシが増えるというデメリットが発生するという好い例です。
また、このデメリットは胴調子のロッドを使う釣りものでは気が付き難いポイントです。
それは、大きく曲がり込む胴がアングルの悪さをカバーしてくれているため。
いつもやっている胴調子のロッドを使った釣りではそれほどバラシが気にならないのに、硬い先調子のロッドを使う釣りものをやった途端にバラシを連発する、という人はおそらくこれが理由ですから要注意です。
75度以下の鋭角がダメな理由
今度は逆に大きく鋭角に振れた場合です。
冒頭に触れた通り、物理的に穂先は鋭角になればより大きく曲がり込みます。
場合によってこの性質を利用することがありますが、それもやはり適正なアングルを理解した上で敢えて行うもの。
私の例で言えば、イイダコ釣りの聞き上げの動作です。
参考 : つり情報チャンネル【イイダコ釣り】スッテの達人はなぜイイダコが釣れるのか?in東京湾
これは動画中でも話していますが、敢えて少し鋭角に構えることでより大きく穂先を曲げ込んで跳ね上がりを抑え、よりじんわりと小さく聞き上げてやろう、という意図で行っています。
ところが、意図せずに癖で常に鋭角に構えてしまっている人がいます。
こちらもデメリットはふたつです。
デメリット① コントロール性の低下
通常、ロッドのなかで最も柔らかくよくしなる部分は穂先から穂持ちに掛けてですから、極端に鋭角なアングルに構えた場合、必然的に負荷はこの部分に集中します。
すると、穂先の反発力が弱くなりますから仕掛け(錘)を持ち上げる際に予想より深く穂先が曲がります。
この性質を逆に利用しているのが先述べたイイダコ釣りでの聞き上げですが、これも90度からマイナス15度の範囲に概ね収まっていると思います。
この範囲を越えた狭いアングルでは、海底の障害物に軽く仕掛けが取られただけで予想以上にグニャリと穂先が入り、その場からなかなか動かせず、外れた瞬間に穂先が一気に戻って跳ね上がってしまうことも。
そして、少しキツい障害物がある場合には根掛かりを回避するのがとても難しくなります。
当然、様々なアクション(誘い)を演出する際にも、このアングルでは曲がり過ぎる穂先が邪魔をして仕掛けのコントロール性が著しく低下してしまうのです。
と、ここまでは釣果に影響する部分ですが、一番マズいのはこの先で、経済的な損失を伴います。
デメリット② 穂先の破損
ということで、ここからがみんな気になるお金の話し(笑)
つまりロッドの破損。
しかも鋭角なアングルがもたらすのはロッド破損で最も多い穂先の破損です。
まず、基本の構えで既にアングルが鋭角になっていないかを確認しましょう。
もし鋭角になっている場合は、そこからアワセの動作に入った時に、アングルが更に大きく鋭角に振れてしまう可能性が高まります。
これこそが最も危険な行為。
参考 : よく穂先を折る人必読!!ロッドビルダーが教える破損防止法
ロッドビルダーとして、見ていて一番ヒヤヒヤするのがこのタイプの人です。
その中でも輪を掛けて危険なのは、半径の小さい円運動でアワセる動作と、腕を空に突き上げるように穂先から穂持ちだけに大きく負荷を掛ける動作の二つです。
半径の小さい円運動とは、前編でも少し触れた脇挟みで竿尻を固定したままや、肘から先だけを使った動作で発生します。
また、突き上げアワセは最も危険で、このような癖のある人はとにかく穂先破損が多い・・・・
穂先から穂持ちのセクションはロッドの中でも細く耐久性の低い部分ですから、ここに大きく負荷を掛けて強くアワセるのは、自らロッドを破壊しに行っているのと同じ行為です。
もうこれは、見ていて本当に鳥肌が立ってしまうんです(汗)
大きな負荷は穂持ちから胴に掛かるように操作するのがロッドの正しい使い方ですから、こういう癖がある人は早急に改善しないと、これからの釣り人生にずっと穂先部分の破損がつき纏うことになります。
なお、先ほど例に挙げたイイダコ釣りの動画では、少し鋭角に構えた聞き上げ動作から、乗りを察知した際には、まずロッドを下げつつ糸フケを取っています。
これにより、若干開き気味のアングルからアワセをスタートし、そのアングルをなるべく保つように腕全体を使って負荷を穂持ちから胴にしっかり掛けていきます。
また、この釣りではストロークの長いスイープなアワセでイイダコをカンナにずり落とす必要が有るため、ロッドをほぼ頂点まで持ち上げていきますが、ここでアングルを無視した動作を行うとアワセは効かず、また簡単に穂先が折れてしまうはずです。
ということで、ここまでいかにアングルのコントロールが大切なのか? そして、逆になぜアングルのコントロールができていないとマズいのか? を解説してきましたが、重要さがご理解いただけたでしょうか?
アングルのコントロールはどうしたらできるようになるのか?
ではここからは、アングルコントロールの方法について解説していきます。
が、その前にまず一番重要なのは、
『自分がコントロールできていないことに気付けるか気付けないか』
です。
そこに、気付けた貴方は確実にライバルに差を付けることが可能なスタートラインに立ったことになります。
気付くことが出来ればあとは実践あるのみ。
そんなわけでここからは具体的な実践方法になります。
と言っても実はそれほど難しいことではありません。
答えは『自分でアングルを見てコントロールする』これだけです。
そのためにはアングルを見やすいフォームが重要になるんですが、ここで前編でやった肘当てのフォームと肘を軽く開いた構えが効いてきます。
この点についてはマルイカのアタリの取り方の回でも解説していますので、その際の画像を再度載せておきます。
要は、肘を軽く開いて構えることで穂先とミチイトのアングルが横から見える様になるわけです。
あとは目で見て適正になるように自分でコントロールするだけ。
たったこれだけのことで、特殊なことをはひとつもありません。
しかしそれでも長年染み付いた適正で無いフォームの癖が邪魔をしますから、とにかく肘当てをマスターすることとアングルを保つことを肝に命じておく、これにつきます。
この意識づけを続けていくと、アングルが適正でない状態が気持ち悪く感じられてくるはず。
そうなればアングルコントロールは完成となります。
補足
それから、アングルコントロールが染み付いている人と疎かになっている人の分かりやすい差がひとつあります。
それはリールのクラッチ操作の回数の違いです。
アングルコントロールに意識が無い人は、船が動いてアングルが変化(ほとんどの場合開いていく)してしまっているのが気にならない。
一方上手な人は、自分の許容するアングルに収めるために、頻繁にクラッチをカチカチとやっているはずです。
なので、アングルコントロールが上手くできない人は、とにかくラインの出し入れをマメにやることも意識すると良いでしょう。
まとめ
今回は、今私がもっとも発信したいことである船釣りの超基礎について、2回に渡って書いてみました。
かなり力を入れて書いてみたので、これが伸び悩んでいる方の突破口になれば!!と思います。
もし実践してみて効果があった、なんてことがあればメッセージいただけると嬉しいです。
また、実際に船上で御一緒できる機会があれば喜んでアドバイスいたしますので声を掛けてください。
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