二刀流の釣りはなぜ面白いのか?
船の小物釣りの中でも、独特の釣趣がある二本竿の釣りが大好きです。
『二本竿の釣り』といっても、ただ竿を二本使う釣り全般ではありません。
左右の手で同時に竿を持ち操作する、言ってみれば『二刀流』の釣りが堪らなく好きなんです。
今回はそんな二刀流の釣りの楽しさについて、個人的な思いなんかをツラツラと書いて見ようと思います。
二刀流スタイルの釣りの原型『江戸前のハゼ釣り』
二本竿を両手で操るスタイルの釣りと言えば『江戸前のハゼ釣り』。
最も伝統的で現代にも通用する、素晴らしいスタイルだと思います。
この釣りでは、手バネ(手羽ね)と言われる竿を使用します。
これは水深の変化に対応する為に考えられた素晴らしい仕組みです。
竿の手元に杭を2~3本立て、ここにテグスを巻き付けておき、水深にあわせてこのテグスを出し入れする、というもの。
リール要らずで水深調整が可能な日本独自の素晴らしい仕組みですよね。
しかもリールが無いから超軽い!!
竿の長さプラスαまではのべ竿同様に竿を立てればそのまま取り込めますし、深場を釣る場合にはテグスを取って手繰ります。
その際に反対の手に持った竿は竿掛けに掛けるわけですが、これら一連の動作を綺麗に淀みなく行うのが腕の見せ所、といったところでしょうか?
もちろん私もこの釣りの大ファンで、父から受け継いだ70年以上前に作られた手バネ和竿を大切にメンテナンスして使いつつ、また江戸和竿職人の親方にお願いして対竿を誂えたりしています。
何気におそらく一番道具にお金を掛けている釣りかもしれません(笑)
竿がリーズナブルなアナゴとイイダコ
そんな由緒正しいハゼ釣りがある一方、同じ手バネの二本竿でも、竿がとってもリーズナブルな釣りがアナゴとイイダコです。
これにはおそらく昭和の高度成長期頃、庶民の食材確保という事情から普及した釣りものである、といった側面が大きく影響しているのではないかと思います。
こちらは一昔前までは自作の簡易な手バネ竿(アナゴでは剣道の竹刀をばらして、ガイドにゼムクリップの取っ手を使ったり、とか(笑))を使用するファンも多かった釣りですが、現在では個体数の減少や、釣りをする場所の水深・地形等の理由からリール竿による釣りが主流になりましたね。
私もイイダコ釣りでは当初、自宅にあった古い1メーター程の手バネの短竿を使用していて、かなり楽しい釣りを経験させて貰いました。
ただ、盤州のような地形の変化が多く水深が大きく変わるポイントでは糸の出し入れに時間を取られるので、効率面でどうしてもリール竿に分が有ります。
その為、少しでも無駄を無くそうとするうちに、だんだんと手バネ竿を使用しなくなってしまったんです。
とは言え、なだらかな地形でゆっくり長く流し込んでいけるような状況であれば糸の出し入れが少なくて済みますから、リールに全く引けを取らない手返しも可能。
それから、ミクロなターゲットを相手にする場合には、やはりリールが無いことによる軽さがアドバンテージにもなります。
つまり掛けた際の重さの変化がより鮮明になる、と言うこと。
昨今しきりに叫ばれるロッドの軽量化ですが、突き詰めるとその利点は正にこの部分にある( 感度云々は軽量化と直接の因果関係はありません )わけですから、手バネ竿恐るべし、です。
また、アナゴ・イイダコの両方に言える大きな変化は、リールを使うようになってキャストを取り入れた、というところ。
参考 : 【イイダコ釣り】スッテの達人はなぜイイダコが釣れるのか?in東京湾
特にアナゴは近年個体数の減少が著しく、投げて探ることは強みになりますよね。
資源量の回復で再び手バネの釣りがやり易くなることを願います。
実はあまりやっている人が居ないシロギスの二刀流
私がやっている二刀流の釣りの中でも、ちょっと異色といえるのがシロギスです。
まぁ、シロギスについてもハゼ釣り同様に、昔は手バネ竿による釣りが盛んに行われていたわけですが、近年はほとんど見られなくなりました。
しかしこれ、やってみるととんでもなく楽しい。
5号くらいまでのとても軽い錘で釣りをするので、ハゼに比べて遊泳力のあるシロギスは、信じられないほどキュンキュンと引きます。
ただ現在、これをやれる状況はほとんど無く、一部の場所で小舟をチャーターする形か、手漕ぎボートで行うしか方法が無いのが実情でしょう。
私の家には、父から貰ったシロギスの手バネ竿(長くて重たいですが)もあるので、機会があれば、これを使ってやってみたいといつも思っています。
と話が逸れましたが、現在私が行っているシロギス釣りは、ベイトリールを使用した二刀流です。
一般にシロギスの二本竿使用というと、「1本手持ち・もう1本は置き竿」、若しくは「1本づつ順に片手に持って誘い、片方は置いて回していく」釣り方でしょうか。
元々手バネ竿でのハゼ釣りをしていたので、リール竿使用と言えどもできれば二刀流で楽しみたい、と考えて行き着いたのが現在の方法。
スピニングリールはベールを返す為にどうしても両手での操作が必要になりますが、ベイトならクラッチ操作が片手で行えますから、二刀流にはこちらがベストでした。
更に、右手に左巻き、左手に右巻きのベイトリールを使うことで、キャストを多用しつつも竿の持ち替えをほぼ無くすことができました。
そんなわけで、もう15年ほどこのスタイルで楽しんでいます。
ところで、そもそも船シロギスでスピニングリール使用がスタンダードになった理由は何でしょうか??
それには “キャストして探ることによる釣果増” が大きく関係しています。
今や船用のベイトリールのキャスト性能は、スピニングに引けを取らないものになってきましたが、ひと昔前までは船用のベイトリールで本気のキャストに対応するものが無かったために、船シロギス = スピニングタックル で行うもの、となったわけですね。
なので現在は、キャストの技術さえあればスピニングに拘る必要は特に無い、とも言えると思います。
まぁ、私の使用しているベイトリールはキャスト性能がとても低いので苦労しているんですが・・・・・
これについては後程述べます。
二刀流をやっていて得すること
単に二本の竿を出すということで言えば、そのメリットは「釣果が増える」ことでしょう。
実際に増えるかどうかは別にして、狙いはそこにあるんじゃないかと思います。
しかし当然ですが、竿を二本出せば単純に取り扱いは倍になるので、より注意力と素早い手返しが必要です。
倍の手間をみる為には手元の技量が必要なので、単に竿を増やしたから倍釣れる、とはなかなかいかない。
ですから、手返しにかなりの自信が無い場合には二刀流はもちろん、置き竿を含む二本竿の釣りもあまり意味をなさず、かえって釣果を落としてしまうことがあります。
特に餌付けが必要な釣りものはこれが一番のネック。
倍の手間を掛けて投入しても釣果が倍にならないなら、それって効率上どうなの??って思ってしまいますよね。
それでも私が二刀流をやるには大きな理由があります。
それは『同時に二つのことが試せる』と言うところ。
例えば
- 仕掛けを左右で変える
- 仕掛け操作を左右で変える
- 餌の種類や大きさを左右で変える
等など。
これによって得られる情報が倍増しますから、釣りの組み立てにかなりプラスに働きます。
具体的にこの “組み立ての為の情報量増加” が役立っているな、と実感することが多いのはシロギスとイイダコ。
シロギス釣りの仕掛けには、胴突きと天秤がありますが、これを左右で試します。
あまり変わらない場合もありますが、明らかにどちらかか良い、ということもあるので確実にアジャストへの近道になっています。
また、私のイイダコ釣りはメインにスッテを使用するんですが、スッテのサイズ、カラー、カンナの種類で反応が違うことが有ります。
なので、スタート時や乗り目が変わったかな? と感じた場合には片方のスッテを違うタイプに変えて状況を見ていき、情報量を増やしていきます。
もちろん、シロギス、イイダコ共に、アクションによる反応の違いについても、両手で操作を変えていくことで素早いアジャストが可能。
パターンがわからない時、迷った時には意識して左右で違う動きを演出していくようにしています。
イイダコ釣りで腱鞘炎になる
とても個人的な問題で恐縮ですが、二刀流をやっていて困ることが腕の疲労と腱鞘炎です。
私のベイトリール使用の二刀流スタイル成立には、ダイワさんのちょい巻きレバーが付いたリール『スマック』がかなり大きなウエイトを占めています。
このちょい巻きの仕組みによって、ハンドルを触らずにミチイトの出し入れが容易になります。
特に私は手が小さいので、これがとても助かるんです。
実はスマック機構の無いベイトリールを使用した場合でも、スタードラグを指で弾いてやればハンドルを触らずにラインのちょい巻きは可能です。
そう考えて、この方式で2シーズンを通したんですが、結果はひどい腱鞘炎に・・・・
というのも、スタードラグを指で弾こうとすると手の小さい私はどうしても握り込みを深くする必要があり、これがとても良くなかったんですね。
この握り方をした状態でイイダコを乗せて、大きくストロークを取ったアワセを行うと、肘と手首にとても負担が掛かります。
特に私は右腕を少し前に出してしまう癖があり、このフォームの崩れから余計に手首と肘に負荷を掛けることになってしまいました。
これが原因で、右手は鞄を持つのもキーボードを打つのも辛い状態にまで悪化。(ちなみにこの時期にカワハギ釣りでは、腕の負担が少ないスナイパー持ちを取り入れています)
痛みが私生活にまで影響してきてしまったので、スポーツ医療を行っている病院で治療とリハビリをしつつ、再度リールをスマックに戻し、併せてフォームを改善することで現在は全く問題無いレベルに回復することができています。
※病院の先生には、イイダコ釣りが原因だ、と説明するのが大変だった思い出がありますが(笑)
現在も右腕が若干前に出る癖は完全には矯正できていないので、右腕の疲労が多めではあります。
なので、今は、いつもお世話になっている整骨院の先生に相談しながら、更なる改善を試みているところです。
ちなみに右腕の疲労が蓄積されていくとまた腱鞘炎に発展する恐れがあるんですが、この対処にはアイシングが絶大な効果を発揮。
プロ野球の投手が登板後に凄い量の氷で思いっきり肩をアイシングしているのには、当然科学的な根拠が有るわけで、これはもちろん釣りだって同じです。
疲労と炎症には最も簡単、且つ合理的な対処法なので、超オススメです。
そうそう。
先に触れたシロギス釣りでのキャスト性能不足についても触れておきましょう。
キャスト性能の悪さが、このスマックというリールの弱点のひとつです。
が、二刀流を続ける上では上記の通りスマックの使用が腱鞘炎の発症とトレードオフの関係にあり、背に腹は代えられず我慢して釣り方でカバーしています。
まぁ、どうにもならない場合に備えて、スピニングタックルを一本持参しはじめましたが・・・・・(2021年はどうにもならない年でした・・・)
ダイワさん、キャスト性能の高いスマックをリリースしてください・・・・(懇願)
二刀流の楽しさの正体はフィッシングハイ??
二刀流の釣りの大前提として、ターゲットの数の多さ、というのが挙げられるでしょう。
アナゴとイイダコは、今でこそ減少傾向にありますが、二本竿の釣り方が確立された背景には「とにかくたくさん居る」という事情があったと思います。
要は、いかに効率良く数を稼ぐか?という観点から用いられてきた方法ということ。
ですから、まずは手返しが大切になります。
右の竿で掛けて取り込んでいる間に、左の竿にも掛かっている、といいうのが理想で、これを交互に素早く繰り返して高速回転させるわけです。
こうなると、釣り人はマシーンと化す(笑)
とにかく取り込んだら素早く外して(究極的には魚に触らないで)投入、そしてまた取り込んで外して、、、、
という流れを途切れずに繰り返すと、いつの間にか凄い数字になっている。
この時に感じる高揚感は正にフィッシングハイです。
全てを忘れて夢中になっちゃいますよね。
これが二刀流の楽しさの根源でしょう。
今現在、それを最も体感できる釣りものと言えばハゼ!!
特に私の地元、市川市が誇るハゼ釣りのメッカ『江戸川放水路』では、ハゼが川底に敷き詰められているかの様な密度で居てくれますから、あとはいかに速く掛けて速く入れ直すか!!!
もちろん、和竿による江戸前スタイルを意識して『綺麗に釣る』ことも両立させなければいけないので、なかなか大先輩の方々のようにはできませんが、だからこそ挑戦のし甲斐もあろうってもの。
無心に釣りまくりつつも、ピンと背筋を伸ばして優雅にして素早く無駄の無い動き。
そして、気付いたら凄い数を釣っている。
そんな人になりたいと常に思っています(笑)
まとめ
ということで、大好きな二刀流についての考え方からマニアックな蛇足まで、思い付くままに書いてみました。
こんな楽しみ方もあるんだなぁ、くらいに思っていただけたら!!
やってみたい、と言う方がいらっしゃいましたら是非お声掛けください。
道具立てやコツ等をお教えします。
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