【船小物釣り上達法】基礎は家で練習すべし‼︎
船釣りは読んで字の如く、船に乗って釣り場に行くことで始まるのは当たり前。
が、こと基本動作やロッドコントロール等の基礎部分に関しては皆さんどうやって身につけているでしょうか?
これ、他のスポーツの場合なら、家や屋外、または施設での練習にとなると思います。
例えばゴルフなら素振りや鏡の前でのフォーム確認、打ちっぱなしでの実践練習、そして上級者やプロによるレッスン等。
つまり本番となるコース以外でのイメトレや練習が当たり前に行われています。
一方で船釣りはどうか?
乗船時以外での練習をしているという話はまず聞きませんし、方法について言及されている様子もありません。
ならば、ということで今回は船釣りをスポーツのひとつと位置付けた上で、乗船時以外=陸上で行える練習とその方法について考えてみたいと思います。
スポーツとレジャーやレクリエーションは不可分である
スポーツを行っている人を「競技者」と呼ぶことがあります。
これは様々なスポーツが本質的に競技としての側面を強く持っているからですね。
とは言えそれを行う人が常に競技指向である訳ではなく、レクリエーションの要素が多分に含まれると思います。
図の様に、競技とレクリエーションを左右に置いた時、2つの間には無段階のグラデーションが生じます。
ある人は非常に競技寄りで楽しむだろうし、競技とレクリエーションを半々で楽しむ人もいる。
あるいは、普段はレクリエーション寄りに緩く取り組みつつも、時と場合によっては競技的にガチでやるなんていう人もいます。
取り組み方は自由であり各々が自由に選択しているわけです。
この様に多くのスポーツでは、これは競技、これは遊び、という様な単純な分け方では無く、どちらの要素が強いのかのグラデーションの中で個々人が立ち位置を決めている、と言えると思います。
見方を変えれば、各種スポーツが取り組む際のスタンスを競技からレクリエーションまで幅広く許容できる構造になっているということも出来ますね。
ですから、我々がエントリーから徐々にやり込んでいく中で更なる上達を願う時、その気持ちの変化に対応した具体的な方法がすぐに見つかるわけです。
船釣りの上達を阻む二つの壁
前述の様に、スポーツには競技としての側面とレクリエーションとして側面が併存し、我々はそのスポーツへの取り組み方や立ち位置を自由に選択できます。
そして、その自由度を支えているのが基礎や練習方法などが確立され明示されている、という事実だったりします。
が、船釣りにおいてはお世辞にもこれが確率されているとは言い難い、という状況にあります。
船釣りはスポーツになりきれていないんですね。
もちろん船釣りにおいても、楽しみ方は人それぞれ自由、というところまでは一緒。
しかしそこから一歩踏み込んで、より競技的に実践しようとした際にはこの「スポーツになりきれていない」という弱点が壁として露呈してきます。
●船釣り一つ目の壁
ひとつ目の壁は入門直後に現れます。
入門者向けの超基礎的なアプローチの提示がほぼ皆無であるという点です。
野球を例に考えてみましょうか。
ただボールを前に投げるだけであれば、多くの人がおそらく何も考えずにそれっぽくできちゃいます。
子供が近所の友達同士でボールで遊ぶレベルですね。
しかしこれが地元の少年野球チームに入って競技としてやっていこうとなると、まずは監督やコーチからボールの持ち方、身体の使い方(腕の振り方、フォーム、重心移動等)等を順を追って教わるはず。
バッティングであればバットの持ち方から振り方、キャッチングならグローブの構え方等から始まるはずです。
これらの基礎的なプロセスを踏んでいくことで、個人差はあれど各々が最短距離でレベルアップできる、というわけです。
この様に基礎的な練習方法とは個々人の持って生まれた能力(いわゆるセンス)に依らず、誰でも一定のレベルに到達できることを主眼に組み立てられている、とも言えます。
もちろん、センスが良い人はざっと見ただけでいきなり出来てしまうんですが、そういう人は基準にしません。
それぞれ上達度合いはバラバラだとしても「その人が一定のレベルに効率よく到達できる」というところがポイントです。
この様に、スポーツには入り口としての基礎理論と訓練法が用意されています。
ということで、船釣りにおいてこのひとつ目の壁をクリアすべく私が提唱しているのがG.F.A理論です。
・関連記事 : 船小物釣り上達の絶対的な秘訣!!G.F.A理論とは【前編】
これを入り口の段階できちんとマスターしておくと、その後の上達が非常にスムーズになる。
これは、私がレクチャーさせて貰った方を見てもかなり明確に表れています。
●船釣り二つ目の壁
次の壁は中級者以上のレベルアップを望む場合。
実は船釣りにおいてはここがかなり難題です。
世にある「上達法」等と銘打った情報は、いわゆる名人や上級者と呼ばれる人達の非常にパーソナルな感覚に基づいた口伝や釣行記的な内容であることがほとんど。
そこには科学的、論理的な説明はあまり無く、個別の事例の羅列が大半を占めています。
ですから、これらの雑多な情報の中から各自がクリティカルなポイントを抜き出して解釈する、という読解力が必要になる。
当然、読解力にも個人差がありますからこれは余計なハードルです。
船釣りを学びたいのに、その前に釣りと直接関係の無い読解力を鍛えないといけません・・・・
この辺のことについては拙著にも記載していますのでご参考ください。
・参考書籍 : ロッドビルダーが教える~カワハギ釣り上達への道~ 本気の人が読む【カワハギ釣りの教科書】
この様に、船釣りはまだまだスポーツになり切れていない訳ですが、その理由としてはどうやら大きくふたつのことが関係していそうです。
ひとつは、日本における船釣りの出自がそもそもスポーツではなく「漁」であるということ。
漁は仕事であり、釣果がそのまま収入に繋がるわけで、その秘訣や技をおいそれと他人に教える様なものでは無いというのは頷けます。
そもそも日本的な「仕事は下積みをしながら見て盗め」という慣習が息づいている世界ですから、システマチックなスポーツとはマインドが全く違います。
なので、この延長線上で考えているうちはなかなかスポーツに昇華されないのかもしれません。
そしてもうひとつは他のスポーツと比べて不確定要素が大きいということ。
つまり相手となる魚や、水中という人間がコントロールできない要素が大きく絡んでいるから、という部分ですね。
スポーツ化を考えた時、この不確定要素だけに注目してしまうと、「釣りは海次第・魚次第」ということになります。
もちろんこれは否定できない事実です。
が、何でも自然相手だから、と片付けて仕舞えばそこで思考停止です。
そこで必要となるのが、不確定要素と確定要素を分けて考える、という考え方です。
不確定要素と確定要素を分離しよう
上記のとおり、「釣り=魚と自然が相手」という不確定要素だけにフォーカスしてしまうのは、上達を望む我々にとってあまり得策ではありません。
しかし、ちょっと視点を変えてあげれば釣りにも確定要素は存在しているんです。
ではその確定要素とは何か?
それは我々釣り人の動きとそれに連動した道具や仕掛けの動き、となります。
実際、スポーツフィッシングと呼ばれるフライフィッシングでは陸上でのキャスト練習が必須。
フライキャスティングはメカニズムが独特なので、ある程度練習しておかないと毛鉤が前に飛ばず、フィールドに出ても全く釣りにならずに終わります。
そんな訳で練習会や講習会等が頻繁に行われているし、更にそのキャスティング自体が競技になったりもしています。
サーフからの投げ釣りでも遠投の為の理論や練習方法があったり、ルアーフィッシングでもキャスト練習で飛距離や正確性を高めることが釣果向上に直接的に繋がります。
これら、スポーツフィッシングとして生まれた釣りに見られるのは、人が行う動作と魚を中心とした自然の動きを一旦分け、確定要素はきちんと陸上で、つまり実戦外でトレーニングしておこう、という考え方です。
この様な考え方を船釣りに転用するとどうなるのか?
と、前置きが非常に長くなりましたが、ここからが今回の記事の肝となります。
家(陸上)で行える船釣りの練習
朝のうちは「よし今日はしっかり練習して何かを掴んで帰るぞ!」と意識高く意気込んでいたのが、実釣になるとやはり目の前の釣果が欲しくなる。
そう考えると、良いか悪いかは別としてその時点で自分が持っている引き出しに頼らざるを得ない。
釣果に繋がるであろう過去に実績のある方法、自己流の方法ばかり行ってしまい、特に発展なく終わってしまう。
これ、私も大いに経験があります。
そして結果が悪ければ「潮が云々」「活性が云々」「席が云々」と言い訳を考えてしまう・・・
船釣りあるあるですね。
もちろん終わってからの状況分析は必要なのですが、練習にならなかったこととは直接関係ありません。
そもそもの間違いは「本番で練習しようとしている」というところなんです。
安くないお金を払っての釣行なんですから釣果を度返しして練習せよ、というところに無理がある。
ゴルフのコースに出て、打ちっぱなしでやる様な練習はしませんよね?
せっかくの本番だからこそ、それをしっかりと楽しむための事前練習は必須。
家での練習が本番で活きてくるのは当然と言えば当然でしょう。
陸上で行える船釣りの練習
では、船釣りにおいて陸上でできる練習にはどんなものがあるのか考えてみましょう。
1.キャスティング
陸上での練習で一番に思いつくのがキャスト練習でしょう。
東京湾の船釣りでキャストを行うのはシロギス、カワハギ、湾フグ等。
安全面からアンダースローを厳守する必要がありますが、これが上手くできないという人は意外に多いものです。
かと言って混んでいる船内で練習するのにも無理があり、上手く飛ばせなくて船下狙いを余儀なくされてしまったり、コントロールが効かずに周りの人に迷惑を掛けてしまうことも・・・・
心当たりがある人は多いと思います。
しかし、これこそ最も簡単に陸上練習が可能な部分ですからやっておいて一つも損はありません。
具体的には、普段使うタックルを準備して錘を取り付け、ある程度のスペースで船縁に見立てた少し高い場所に立ってアンダースローで軽く投げるだけ。
自宅の庭や空き地、場所と時間によっては公園でもできそうですね(ルールに従って行いましょう)。
力の入れ具合と荷重の掛かり具合の確認、ラインをリリースするタイミングなんかを身につけるには繰り返しが必要ですから、釣果を気にしなくて良い陸上での反復練習はとても効率的です。
ちなみに船釣りでのキャスティングについては以下の記事もご参考ください。
関連記事 : 間違いだらけのキャスト方法!!「ロッドの弾力を使って投げろ」は間違いです
2. テンションコントロール
次はラインテンションのコントロールです。
カワハギ、シロギス、湾フグ等、錘を海底に付ける釣り物では、ラインのテンションコントロールが必須となります。
テンションコントロールにおいて、張らず緩めずの状態を保つのがいわゆるゼロテンですね。
しかし、このコントロールが上手くできずに苦労している人、又はそもそもコントロールできていないこと自体を認識出来ていない、という人がけっこう多い。
ちなみに、陸からの釣りではラインテンションのコントロールというのはそれほど難しいことではありません。
ところが船上からの釣りになると途端に難しくなるのは、船=足場が止まっていないということが大きく関係しています。
船は波に揺れ風や潮に押されて移動する物なので、陸にいる時の様にピタリとは止まっていられない。
その辺りのことについては別記事でも触れていますので参考にしてください。
参考記事 : 気付けばもっと釣れる!!陸っぱりと船釣りの決定的な違い
常に揺れと移動が発生している船の上でミチイトのテンションをコントロールするには、次の点をクリアしなくてはいけません。
・正しいフォームとロッドアングルを身につける
・身体を使って揺れを吸収する
いかがでしょうか?
ふたつとも釣り人側で行うもの、つまり確定要素です。
陸上でも工夫次第である程度練習できそうじゃないですか?
3.誘いのイメージ作り
船釣りにおける仕掛のアクション、つまり「誘い」は、とても重要な技術です。
と言うのも、魚が見ているのは仕掛と付け餌だからですね。
極端な話し、釣り人が船上でどんなにおかしな動きをしていようが、水中の仕掛けと付け餌が適切に動いていれば喰ってきます。
また、どんなに良いロッドやリール、優れた仕掛けを使っていたとしても仕掛けと餌の動きが不適切であれば釣れない、ということにもなる訳です。
しかし、その日、その時に求められる適切な仕掛けの動きというのは常に一定ではない。
ここは不確定要素ですね。
とは言え先にも書いた通り、不確定要素を入り口にしてしまうと迷子になってしまいます。
そこでまず我々がすべきことは確定要素である自分の動きの基準 = パイロットパターンを身につけること。
パイロットパターンはその日の魚の様子を予想するための土台です。
そこで、これを確立するための練習が上達への早道になるわけですね。
であれば、より効果的な練習方法が必要となる。
そのひとつが陸上での練習なわけで、ボトムでの仕掛けコントロールにはこれがバッチリはまります。
例えば、私がシロギス釣りでのパイロットパターンとして推奨しているのが、ボトムでの移動距離を抑えた誘いである「フラッタリングアクション」。
参考記事 : 【船シロギス】アタリを倍増させろ!!最強の『誘い掛け』を隅々まで解説します〜①実践編〜
【船シロギス】アタリを倍増させろ!!最強の『誘い掛け』を隅々まで解説します〜②実践編〜
こちらの動画では、このフラッタリングアクションを船宿さんの桟橋をお借りしてお見せしています。
これを身につければ、あとは同じ動作内で強弱を調整していくことで多くの局面をカバーできるので、非常に効果的。
もちろん本番では潮の強弱や水深で水の抵抗が変わってくると思いますが、これは不確定要素。
それを言い出すとキリがありませんから、まずはとにかく確定要素たる我々の身体の使い方と手の感触を中心にイメージを掴んでいくと良いでしょう。
その他、ボトムに錘をつけて行う操作であれば基本的には陸上で行うことが可能です。
例えば
・錘ズル引き時の速度を視覚的に掴む
・底トントン(ボトムバンプ系アクション)での移動距離のイメージを掴む(結構大きく移動していることに驚くはず)
・カワハギ、マルイカ等での叩きの練習
等がこれにあたります。
4.その他の家でやれる練習
ここまで挙げた例の他にも家でできる練習は幾つかあります。
・取り込み動作
大きな魚を掛けた際のやり取りや取り込みは別として、我々が普段行っている小物の数釣りでの取り込みの動作は確定要素と言ってもよいでしょう。
つまり練習により確実に上達できることのひとつです。
ここで少し小物釣りからはズレますが、スルメやヤリイカを狙った沖のイカ釣りを例に挙げてみましょう。
沖のイカ釣りでは取り込み動作自体が釣りの醍醐味であり技量の見せ場になっています。
時には20本超とたくさんのイカ角をつけた直結仕掛けを使用して多点掛けを狙う。
釣り人は熟練度を上げ、場合によって30メートルを超えるような長い仕掛けをスムーズに取り込んでは絡ませずに再投入していきます。
これ、余程のセンスを持ち合わせていない限り、月に数回の釣行時に行うだけではなかなか実用レベルにならないので、家で練習する人は結構います。
沖のイカ釣りにおいては取り込み動作=釣果とも言える必須のスキルなので、必要に迫られて行うわけですね。
このような感覚を我々の普段の釣りにも持ち込んでみる。
しっかり練習しておけば、取り込み動作がバタバタしたり、そもそもの動作の不味さでロッドを破損させたりという事故のリスクも一気に減っていきます。
↓↓↓取り込み動作はこちらの動画でも実演しています↓↓↓
・ラインの結節(リーダー等)
家で行える練習で代表的なのがラインの結節。
これはやったことがある人も多いでしょう。
サルカンへの結節、針結び、ライン同士の結節(リーダー等)は風や揺れがある船上で行えるように手癖がつくレベルで家で練習しておくべきです。
なお、小物の数釣りで必要なノットはサルカン等の結節、それほど難しくない上に数もが限られています。
やりやすいものをしっかり練習しておけばトラブルなく1日の釣りがスムーズになりますね。
まとめ
ということで、今回は家での練習、つまり船に乗っていない時に行える事前練習について書いてみました。
船釣りをスポーツと捉えれば上達には事前の練習が欠かせないはず、というのがこの記事のスタート地点です。
そして、逆にこれらを地道に行っていくことが着実、且つ最短での上達に繋がっていく、というのは船釣りがスポーツのひとつである、と再認識させてくれる事実ではないでしょうか。
切実に上達を願うなら、是非家での練習を取り入れてみてください。
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