間違いだらけのキャスト方法!!「ロッドの弾力を使って投げろ」は間違いです
ここ20〜30年の船小物釣りでは、ロッド、リール、ラインの進化が著しく、これが釣法にも大きく影響を与えて来ました。
最も代表的、且つ目立った変化はビシアジや太刀魚など、元々ヘビータックルで狙っていた釣り物のライト化でしょう。
これはひとえに細くて強いPEラインの登場によるもので、ひとつテンヤやタイラバなんていう新しい釣り物が生まれてきたのも同様の理由です。
そしてもうひとつ、実はこの流れと並行して起こった変化があります。
それはベイトリールの進化、主にバスフィッシング用ベイトリールの技術が船釣りに持ち込まれたこと。
これにより船の小物釣りにおいてのキャストが一般的になり、釣法自体にも変化をもたらしています。
25年ほど前に遡ると、船釣りの世界では大型の両軸受けリールが広く使用されており、一部で片軸受リール、シロギスをはじめとするちょい投げにスピニングリール、場合によってはリールの無い手羽ね竿が使用されていました。
そこに細いPEラインが登場し、スプールのキャパシティに余裕が生まれたため、船釣りの世界でもバスフィッシングで使用するような小型で高性能なベイトリールが使用出来るようになったわけです。
バスフィッシングで使用されているベイトリールは、小型軽量であることはもちろん、キャスティングをサポートするブレーキ機構を搭載していることが最も特質すべき点です。
キャスト可能な道具が持ち込まれたら、キャストをする人が出てくるのは必然。
これが非常に顕著なのがカワハギと湾フグでしょう。
今ではキャストするのが普通のことになりましたが、そうなったのは意外にもここ10年かそこらのこと。
実は当初「キャストは禁止だ」なんて言うひとも居たくらい一般的ではなかったのです。
ちなみに船シロギス釣りはキャストが可能な船用ベイトリールの無い時代にちょい投げがメソッドに組み込まれたため、消去法的にスピニングを使用していたという歴史を持っていて、それが今も固定化されているんですね。
この辺りの変遷や使い分けられてきた流れなんかは以前の記事でも触れていますのでご参考ください。
と、歴史的経緯はこのくらいにするとして、今回考えてみたいのはこのキャスティングとロッド(主に穂先)破損の関係についてです。
穂先の破損については何度かこのブログや動画でも回避する方法をお伝えしてきたんですが、「キャスティングによる破損」にはあまり触れてこなかったので、ここで気になる点を挙げておこうと思います。
船小物とルアーにおけるキャスティング理論の根本的な違い
前述のとおり船小物釣りにおけるキャスト(特にベイトでの)という行為は歴史が浅いです。
また、そもそも船で沖に出ている訳で、飛距離が無いと魚のいる場所に届かないということでもない。
つまり、必須ではないので方法論自体がきちんと示されていないんですね。
そのため、誤った考え方と方法が流布されてこれが穂先の破損を引き起こしている、という状況を目にすることが最近は特に多くなりました。
その誤った情報の代表が『キャストにはロッドの弾力を使え』というやつです。
「いや、それは正しい!!キャストはロッドの弾力で投げるものだ」
という人もいるかと思います。
確かにこのメカニズム自体はキャスティングを頻繁に行なうルアーフィッシングでは常識であり、もちろん間違いではありません。
しかし、このルアーキャスティングでの常識は、船小物釣りの世界にそのまま流用できないんですね。
その理由とは、
①投げる物の重量
②ロッドの構造の違い
の2点です。
順に説明していきましょう。
①投げる物の重量
・ルアーはとても軽い
ルアーフィッシングで投げるルアーは総じて軽いものが多いです。
もちろん巨大魚を狙って投げる大きなルアーや、超深場を狙うための大きなジグもありますが、それはまぁ例外でしょう。
一般的にキャストが必要なバスフィッシングやトラウトフィッシング、陸っぱりからのシーバスやクロダイ、アジなどを狙ったキャスティングゲームに使用するルアーの多くは軽いものでは数グラム、重くて30グラム程度まででしょうか。
これらをなるべく遠くに投げ、探る範囲を広げてヒットチャンスを増やす、というのがルアーフィッシングの肝にもなっていて、ロッド、リール共にキャスト性能を高める為の工夫が施されています。
つまり、ルアーフィッシングでは軽いものをいかに遠くに飛ばせるか?というのがひとつの命題であり、そのための技術として「ロッドの反発力と遠心力を最大限に生かす」というのが重要となるわけです。
もう少し踏み込んで言えば、数グラムのルアーの重さでもしっかり曲がって反発力を生み、キャスティング時に射出速度を増幅してくれるロッドが必要になる、と言うことですね。
・船釣りの錘はすごく重い
一方で我々が行っている船釣りはどうでしょうか?
もちろんルアーは使用しないので、キャストするのは錘(+仕掛け)です。
そしてその錘はルアーと比べると圧倒的に重い。
例えばキャストが多用される東京湾のシロギス釣りで使用される15号錘はグラム換算で約56グラム。
カワハギで使用される25号となると約93グラム、30号では112グラムで、巨大魚を狙うルアーフィッシング以外ではあまりキャストする対象にならないくらいのヘビーウエイトですね。
ここまで重い物をライトなロッド、且つ0.8号〜1号程度の細いPEラインで投げるわけで、軽いものを投げるルアーフィッシングのキャストとは違う、というのも何となくお分かりいただけると思います。
②ロッドの構造の違い
・強度と射出速度増幅に適した胴寄りの調子
釣り竿は先端に行くに従って細くなるテーパー構造になっています。
従って、細い先端(穂先)は手元側の太い部分より物理的に弱いのですが、手元側から徐々にしならせて負荷を分散してやると、多少華奢なロッドでも簡単には折れないものになります。
実際、ライト・ヘビーを問わず多くのジャンルのロッドがこの構造を持っています。
そして、この「緩やかにしなる」という構造は、先述した「軽いルアーの射出速度を上げる」ためにもとても理に適っています。
ルアー自体にあまり重さが無いので、ロッドのしなりと遠心力を使ってキャスト時の射出速度を上げて遠くへ飛ばしてやる、というのが求められるんですね。
・超先調子を代表とする船小物用ロッドの特殊性
が、これに合致しない構造をしたロッドも存在します。
それが一部の船小物釣り用のロッドで、具体的には『超先調子』のロッドのことです。
つまり穂先付近だけが極端に曲がって他の部分があまり曲がらないもので、カワハギや湾フグ、マルイカ(ゼロテン)のロッドがこれの最たるものになります。
まぁ、マルイカについてはキャストしないので今回のお題からは除外ですね。
では、これらのロッドがなぜこんな構造を取るのかと言えば、それは「アタリを取ること」「操作性アップ」等に極端に特化させた結果です。
ちなみに一部が極端に曲がるということは、前述した「緩やかに曲がって負荷を分散する」というロッドの基本構造から大きく逸脱しているんですが、それが許される理由は
・ターゲットが総じて小さいので負荷が分散されなくても強度的に対応できる
・遠くにキャストする必要性があまり無い
という2点にあります。
なお、これは竹をはじめとした天然素材だけでは強度面で実現不可能だったはずのこと。
グラス、カーボン、チタン合金など、ロッドの素材自体の強度向上により無茶が効くようになったので超先調子構造を目指すことが可能になった、という側面も無視できない事実です。
船小物釣り用のキャスティング方法
ここまでで船小物釣り、特に超先調子のロッドを使用する釣りにおいてはそのロッドの構造と錘の重さ故、ルアーキャスティング等で基礎とされるロッドの弾力を使った方法があまり適していない、ということがおわかりいただけたかと思います。
とは言え、やはり近年のカワハギや湾フグ釣りにおいてキャストを行なうことは必須となってきているのも事実。
なので、これら「超先調子ロッド」を使用する船小物釣りに適したキャスティングの方法を改めて考えてみようと思う訳です。
・重い錘を利用した「放り投げる」キャスト
船釣りの錘は総じて重く、これがルアーキャスティング等との大きな相違点である、というのは既に述べた通りです。
ルアーキャスティングでは、そもそも「軽いルアーを普通に放り投げるとあまり飛ばない」ので「ロッドの反発力と遠心力を使って射出速度を上げて飛距離を稼いでいる」訳です。
では、船釣りに使う錘はどうかというと、その答えは「重いので普通に放れば簡単に飛んで行く」となります。
つまり、殊更にロッドの反発力を強く意識した投げ方は必要無い訳ですね。(なお、遠心力についてはロッドの長さが自動的に担保してくれます)
例えば掌に収まるサイズの石ころをアンダースローで軽くポーンと放ってやれば、誰でもちょい投げレベルの飛距離は出るのではないでしょうか。
そして、この程度の飛距離であれば、手首のスナップや肘、腕全体の使い方等、特段の技術は要らないと思います。
このイメージで錘をフワっと放ってやれば船小物釣りでのキャストは理論上完成となります。
「ロッドを曲げてやろう」「素早いスローイングをしてやろう」なんて考える必要は無いんですね。
・船小物用キャストの手順
もう少し具体的に船小物釣り用のキャスト方法を解説すると、手順は次のようになります。
①まずは穂先で錘をぶら下げておく
最初に錘をぶら下げておくことで、ロッドに錘の重さ全てが掛かっている状態から動作に移れるためパワーロスが起きません。
②ロッド全体に錘の重さを乗せて放り投げる
ぶら下がった錘の重さを活かしてふわっと投げてやれば、ロッド(特に穂先)に無理な負担を掛けずに済みます。
と、書いてしまえば何とも簡単な話で、方法自体に何ら難しいことはありません。
しかしながら、穂先をグイッと鋭角に曲げて突き出すようにキャストしたり、極端に速く強いスローイングをしてしまったり、という人が多いのは、「ロッドの反発力を云々〜」という、そもそも船小物釣りの道具立てにはあまりそぐわない言説に因われてしまったからに他ならないと思われるのです。
まとめ
ということで、今回は結構間違えている人が多い船小物釣りのキャスティング方法について考えてみました。
もちろん独自のやり方でトラブル無く必要な飛距離を得られている、という人には今更不要な情報でしょう。
しかし、キャスト時に穂先を破損させてしまう人や、パワーロスを起こして上手く投げられない、という人は、今いちど原理から見直してみると解決の糸口を掴めるはずです。
意識したいのは「重い物は軽く放り投げれはきちんと飛ぶものだ」ということ。
上手く飛んで穂先も折らなくなるので、良いことづくめですよ。
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