東京湾奥はこう狙え!!ストラクチャー撃ちメバルの全て
東京湾の船釣りでは、例年2月になると『エビメバル釣り』が解禁となります。
今更説明の必要は無いと思いますが、念のためエビメバルとは何か?と言うと、
日中に生きた藻エビを付け餌にして狙うメバル釣り
ということですね。
そして、このエビメバル釣りのなかでも、従来の狙い方やイメージとは一切を画す、ストラクチャーにタイトに付いた良型を狙っていく、非常にルアー的な要素の強い “ストラクチャー撃ち” というスタイルがあります。
実はこれ、攻略要素満載の超面白い釣り方なんですが、悲しいことにほとんど紹介されていないのが現状。
なので、今回はこの釣り方について、『ストラクチャー撃ちメバル』のマニア代表として詳しく書いてみたいと思います。
昼間のメバルの気難しさを知る
私がエビメバル釣りを始めたのは、確か今から20年近く前のことだったと思います。
乗り込んだのは浦安吉野屋さんのメバル船。
元々ルアーやフライに傾倒していた為、メバルにはターゲットとして馴染みがあり、それなりに釣る自信がありました。
しかし、乗船して担当の青山船長の釣り方解説を聞くと、メバルって結構アグレッシブに餌を追ってくるよね、というイメージとはまるっきりかけ離れています。
東京湾奥の昼のメバルは非常にナーバスな魚であり、雑な仕掛け操作では警戒させてしまったり、最悪な場合、群れを散らせてしまう。
根掛かりしてロッドを煽るなどもってのほかで、これをすると一瞬でポイントが沈黙することもある。
仕掛けはゆっくり上げ下げし、アタリを出すポジションはゼロテンステイ。
そしてアタリがあってもアワセは厳禁。
コツコツとしたあたり(中アタリ)でじわっと穂先にテンションを掛け始め、グイッとしっかり引き込まれたらゆっくりと竿全体を持ち上げてメバルの引きとロッドの弾力で針掛かりさせる、との説明。
最初はさすがに「船長が大袈裟に言ってるんだろう」と思っていましたが、実際に釣りを開始すると確かにカサゴは簡単に釣れますがメバルはなかなか釣れず・・・・昼はこんなに気難しいのか??と呆然。
思えばルアーではナイトゲーム中心にしていたわけですから、昼の状況は知らなかったんですね。
昼のメバル恐るべし!!
そう思って、そこからは言われた通りに丁寧な操作を心がけていると、コチョコチョと前アタリからコツッコツッと中アタリ、そしてズドーンと引き込む本アタリ!!
初挑戦で運良く32センチの良型を筆頭に十数尾のメバルをゲットし、船長の教えを守ることの大切さが身に沁みた釣行となったわけです。
【丁寧な操作】と【放置】を混同するな
いきなり尺メバルをゲットして、この釣りの魅力にどハマりしてしまい、そこから毎週の様に浦安通い。
船長に教わった通り、とにかくゆっくり丁寧な操作を心がけて釣りをします。
これで少しづつ釣果が安定してきますが、ある日船長から更なるアドバイスが。
それは「ストラクチャー周りはもっと積極的に探っていけ」というもの。
ん??
ゆっくり丁寧にって言ったから、投入したら極力動かさないで待っとけば良いのかと・・・・
確かに、メバルが連発するのはストラクチャーのキワや底質に変化のある場所、というのは数度の釣行で感じていましたから、”居る場所” に入れてやることが大事なのはわかります。
なのでここから、ゆっくり丁寧な操作はそのままに、とにかく地形変化を探っていくことに。
おぉ、なるほど!!
これを教わったことで一気に釣果が向上。
【ゆっくり丁寧に】と【投入したらアタるまで放置】を混同してたんですね。
これ、東京湾奥の昼間のメバル釣りでは多くの人が勘違いしやすいところじゃないかと思います。
もちろん前述の通り、雑に動かしたり、大アワセを入れたり、根掛かりしてロッドを煽ったりするのは御法度ですから、これをやらかすくらいなら余計な操作をしないほうが良い、というのは一理あります。
とはいえ本来夜行性で、昼間はストラクチャー(特に縦ストラクチャー)にタイトに付いていることの多いメバル。
居ない場所に餌を入れて待っていても、おそらく一生釣れません。
メバルの付き場にならない底質が柔らかくフラットな場所はパス。
少しづつ探っていく中で段差やハードボトムを発見したらすかさずステイ。
すると気持ちいいくらい思った通りアタリが出る!!
自分で見つけたスポットに再び投入。
狙って釣れるから、入れる度にアタってきて10連チャン、20連チャンなんてことも!!!
楽しすぎました。
ちなみに、湾奥のメバル船の船長は、慣れない人でも仕掛けがポイントに入りやすい様に船を操作しています。
浦安吉野屋の青山船長は
「20〜30秒に1回、仕掛けをゆっくり2〜3メーター程度持ち上げて、少し止めたらゆっくり下ろしてね」
と釣り方を説明していますが、これはメバルが居ない場所で粘り続けずに仕掛けの位置を変えてやること、および上から落ちてくる餌を見せる効果を狙っている、ということ。
そして更に一歩踏み込むと、
「お客さんが仕掛けを持ち上げている時を見計らって船を動かしてポイントに入りやすくする為」
でもあるんですね。
なので、入れた場所に置きっぱなしだと、船長も釣らせようがなくなってしまうんです。
東京湾奥という特殊環境とストラクチャー撃ちの有効性
東京湾奥の海底は、主に砂泥の底質によって出来ています。
ですから元々根魚の付き場は余り無かった、というのが実際のところ。
それが昭和以降の開発により海洋の人工物、ルアー的にいうと “マンメイドストラクチャー” が増えることで、これらが根の代わりとなりメバルやカサゴが増えて来たようです。
したがって、湾奥のメバル釣りの多くは人工物を目安に行うことになります。
が、その人工物は一部存在する漁礁を除けば、魚の為に作られたものではありません。
例えば “シーバース”。
これは工業用の資源を巨大なタンカーなどから陸の工場施設へ移動させるためのもので、多くは海底に支柱を打ち込み、その上に設備を配す構造になっています。
つまり、メバルの付き場はこの支柱や、それらを打ち込む際に設置した基礎のコンクリートや捨て石等になるということ。
もちろん柱ですから人工漁礁のように広い面積はありません。
大きくて数メートル四方、小さいと数十センチ四方です。
その中でも潮の当たり具合や光の入り具合により、メバルの付き場は片側に寄っていることが多く、必然的にピンスポットになります。
そして、このピンスポットから外れると、そこはメバルの付き場にはあまり向かない砂泥質の海底です。
加えて東京湾奥でメバル釣りが開始される2月は、彼らが最も体力を失っている産卵後、且つ一年で最も水温が低くなる時期でもありますから、活性は低めでストラクチャーから余り離れません。
これらの要因により、仕掛けがピンスポットから少し外れるだけでアタリが無くなるワケです。
これは、逆に言えば湾奥の昼のメバル釣りにはストラクチャー撃ちが欠かせない、ということを示しています。
ストラクチャー撃ちメバルの道具立て
と、だいたいの概略をお伝えしたところで、具体的なお話しへ移りましょう。
まずはタックルです。
リールは手巻きでPE0.8号が巻いてあれば何でもOKなので説明は省きます。
その他を見ていきましょう。
ロッド
基本的に向こう合わせで、魚の引きとロッドの弾力を利用して針掛かりさせるエビメバル釣りには、6:4から7:3程度のしっかり曲がってタメの効く調子のものが向いています。
現行で各メーカーがラインナップしているメバル竿というと3メートル以上のものが多く、短くて2.7メートルという感じでしょうか。
しかし、ストラクチャー撃ちではキャストを多用する為、あまり長いものは投げ難くなりますし、バットから曲がってしまうと操作し難い。
また、そもそも狭いストラクチャーを攻める際に長さが邪魔になります。
一方でゲームロッドからのチョイスという手もありますが、こちらは1.6〜2.1メートルが大半です。
短すぎると仕掛けの全長(後述)とのバランスが悪くなり、こちらもキャストし難く、また取り込み時に魚が船縁を上手く越せません。
これらを総合すると、
- レングスが2.4メートル前後
- キャストと仕掛け操作ができるようにある程度バットが強い
というのがストラクチャー撃ちメバルに向いているロッド、ということになります。
・・・・が、この条件だとあんまりラインナップが無い・・・・
一部の釣具店さんのオリジナルか、過去にリリースされていたエビメバル専用ロッド等を中古で入手して使う、というのが現在できる方法かな。
いっそのこと、うちの工房で企画しようかしら??
仕掛け周り
仕掛けは基本的に従来のエビメバル仕掛け、つまり3本針の胴突き仕掛けでOKです。
気をつけたいポイントは
- 幹糸が1.5号〜2号、ハリスが0.8号〜1号であること
- ハリス長は30〜40センチであること
の二点。
太い仕掛けは明らかに食いが悪くなりますので市販品を購入する際には注意が必要です。
なお、使用するロッドに合わせて仕掛けの全長を調整するのも一手。
例えば私の場合だと、市販品の全長240センチ(枝間60センチ)仕掛けだと長すぎて使い難い。
使用するロッドが235センチ(ダイワさんの極鋭シルキー)なので、仕掛け長とほぼ同じになります。
ロッドの曲がりを勘案すると少々長すぎなので、私は枝間50センチ、上下40センチの全長180センチで自作して、15年以上これでやっています。
針はチンタメバルやヤマメ針などの細軸な物で、7〜9号をチョイス。
生きたモエビを付け餌にしますから、針は軽い方がエビの動きを阻害しないだろう、という狙いもあります。
錘は20号の小田原型が基本で、無着色のもので問題無し。
黒く塗ると良い云々、という情報もありますが、これはまぁ関係ないですね。
ストラクチャー撃ちでは潮が速いと狙ったピンスポに上手く入らなかったり、せっかく入っても流されて一瞬で外れてしまったりということがあるので、25〜30号も持参して使い分けます。
枝スは回転ビーズを使用して取り付けるのがベスト。
昔は “枝スは接続具を使わず直結びが良い” 等と言われていましたが、ヨレて幹に絡まるとハリス長が活かせませんし、そもそもトラブルの元。
細糸用の小さくて透明な回転ビーズを使えば、目立ち度は結び目と大差ないですし絡みが激減。
メバルの食いにも全く影響がありません。
また、ハリス切れや針先が鈍った際に仕掛けごと張り替えていては非効率です。
私は替え針を15〜20本程度結んで持参し交換しながら使用しています。
今回の肝!!ストラクチャー形状の把握と投入
東京湾奥でストラクチャー撃ちが有効な理由は既に述べた通りです。
ストラクチャー撃ちとは 一言でいえば “メバルの居場所に付け餌を入れてやること” ですから、ストラクチャーの形状を把握することが欠かせないのは言うまでもありません。
ところがこれが意外と難しくて一筋縄ではいかない。
これは、昼のメバルが海底付近に居ることと、ポイントの水深が20メートル前後とそこそこ深いことに関係しています。
どういうことか、ストラクチャーの形状別に考えてみましょう。
シーバース
先述しましたが、東京湾奥のメバルの重要なポイントとひとつがシーバースです。
そしてここを狙う際に考えなくてはいけないのが斜めに入った柱。
そしてこれが結構難問なんです。
というのは、水面から上に出ている建造物の位置に合わせて仕掛けを撃ち込んでも、そこから20メートル下には何も無いことがあるからです。
絵を見ていただければわかりますが、水面と柱の接点に仕掛けを撃ち込んだとしても、20メートル下の海底付近にはストラクチャーがありません。
当たり前といえば当たり前なんですが、こういう狙い方をしてしまう人はとっても多いです。
なので、こういったストラクチャーを撃つ時には20メートル下の柱の位置を予測する必要があります。
もちろん、なんとなく撃って落ちた位置にたまたま捨て石等があって釣れることもあります。
そんな場合は、その位置を覚えておいて同じ位置に入れていければ連発できますが、なんとなく撃ち込んでいると再現できなくなるので注意。
また、斜めのストラクチャーを撃つ際にやっちゃう人が多いのが、投入の際に柱の向こう側に仕掛けを入れてしまうミス。
これ、ハリスやミチイトが柱を跨いで向こう側にあるわけで、この状態で運良くメバルがヒットしたとしても、上げてくれば根掛かり必至。
まずキャッチできないと思って良いです。
この二つの点に気をつけつつ、潮の向きと強さを勘定に入れて投入点を決定。
上手くピンスポットに入れることができれば、答えはアタリというかたちで比較的早く出ることが多いです。
活性が低く、食ってくるまでに長めのインターバルが必要な場合は、ステイするピンスポットをボトムの感触を頼りに決定すると効率的です。
というのは、柱の根本には基礎のコンクリートや捨て石が入っていることが多いから。
根魚全般に言えますが、障害物が複合している場所は、よりたくさんの魚が付いている可能性が高いです。
柱のだけの場所よりも、ハードボトムが絡めばメバル率はグッと高まりますからこんなポイントを見つけたら絶対に場所を覚えておきましょう。
ブレイク(ヘリ)
東京湾奥のメバル釣りで、もう一つ意識しておかないといけないのがブレイク、つまり縁(ヘリ)です。
基本的に砂泥質の東京湾奥ですが、大型船が航行する航路は人工的に掘り下げられています。
いわゆる浚渫(しゅんせつ)ですね。
これにより数十センチから数メートルのブレイクが点在しています。
また、橋脚などは根本にコンクリートの基礎をを打ってある場合があり、ここもブレイクになります。
これすなわち縦ストラクチャーで、メバルの付き場になります。
ブレイクはシーバースの柱を狙うのとは違い、海面に直接的な目印が無い場合が多く、海底形状を予測するのがなかなか難しいです。
なので、このようなポイントでは仕掛けを軽くキャストして錘で地形を探ります。
手前に小さくゆっくり移動させながらハードボトムがあれば一旦ステイ。
浚渫のヘリの砂泥は潮流で削られやすいので、エッジに硬い地形が表出している可能性がありますし、そもそもハードボトムはメバルのポイントになっているかもしれません。
暫しステイしてみて反応がなければ再び探っていき、ブレイク、つまり錘が落ちる場所を見つけたらすかさずクラッチを切る。
これで仕掛けはブレイクに沿って落ち、縦ストラクチャーの底付近に付いたメバルを直撃。
ピタリと入れば、これも気持ち良くアタリが出ること多数です。
なお、この時に周りの景色でブレイクの位置をある程度把握(山立てですね)しつつ、ラインの色で水深を見ておけば、次の投入で上の段と下の段の見分けがつきます。
上の段に入れたらブレイクを探して落とす、を繰り返して連発を狙うわけです。
また、座席によっては上の段から探り難いこともありますが、そんな時は周りの景色からブレイクの方向を把握しておき、下の段からロッド操作でなるべくブレイクに近づく様に操作していきます。
船長もブレイクに乗船者の仕掛けが入るように操船してくれますので、きちんと操作していれば思ったようにアタリを出すことが可能になります。
まとめ
ということで、湾奥のメバル釣りのひとつのスタイルであるストラクチャー撃ちについて解説してみました。
ちなみに私は、たまたまエビメバルをこのスタイルで始めたので、暫くはこれが当たり前だと思っていて、一般的な “待ちのメバル釣” りを知ったのは数年が経ってからでした。
ある時知人に「メバルなんて仕掛けを垂らしてじっと待ってると勝手に釣れるんでしょ?」と言われ、ショックを受けたのを良く覚えています。
超楽しいのにみんな知らない・・・・・・
これは一度、誰かがしっかり解説しておかないとイカン!!と思い立ち記事にしてみたわけで、少しでも興味を持っていただけたら嬉しく思います。
あ、それから一応断っておきますが、狙い方は船宿さんやメインにしているポイント、はたまたその日の状況によって変わってきますから、常にこのような狙い方ができるとは限りません。
様子を見ながら、もし成立しそうな状況であれば実践してみてください。
きっとストラクチャー撃ちメバルの威力と楽しさを実感していただけるんじゃないかと思います。
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