カワハギ竿には作り手が意図した使い方がある
当工房のオリジナルロッド『カワハギ斬-ZAN!!-TypeHH』はカワハギ独特の手感度である『擦過シグナル』を察知することに特化させたロッドです。
ここでまずは、『擦過シグナル』についての認識の確認。
当工房では、カワハギの歯が針に触れたと考えられる「カリカリ」「カサカサ」「チリチリ」等の擦れるような振動を『擦過シグナル』と呼んで明確に区分しています。
現在「手感度」は手に感じるアタリ全般を指す言葉として使用され一般化しました。
例えばブルッ、カツン、などの打撃系のアタリや、竿先に掛かる重さである「モタレ」なども含んで、とても大きな括りとして様々な釣り物で便利に使用されているのです。
が、カワハギの擦れるようなアタリだけがこれらとは明らかに違う特殊なシグナルであるため、単に「手感度」と表現すると伝わり切らない。
そのための区分として『擦過シグナル』と呼ぶことにしているのです。
ということで話を戻します。
カワハギの『擦過シグナル』をより早く、減衰させることなく手元に伝達させようとすると、穂先から胴、グリップ周りまでをとにかく軽くて硬度の高い素材で作るのが正解と思われます。
しかし、これらに重きを置くあまり「魚を釣る」と言う釣り竿本来の機能が損なわれては意味がありません。
つまり、
ロッドは固く曲がらないほうが『擦過シグナル』の伝達は良い ⇔ 穂先を曲がらないくらい硬くすると、魚を針掛かりさせるのが非常に難しくなる
と言う二律背反に陥りがちな訳です。
機能を追及するあまりに釣りが難しくなってしまっては本末転倒。
この点を何とかする為に穂先を不必要に硬くせず、ブランクスを見直し、それが奇跡的にうまくいって、結果的に現在リリースされているロッドの中でも最上級と思われる手感度=『擦過シグナル』が得られたのが『カワハギ斬-ZAN!!-TypeHH』だった、というのは別の記事でお伝えしました。
参考記事 : 奇跡の手感度は偶然から生まれた。
このように、特定の魚種にフォーカスした竿には多かれ少なかれ、製作者サイドが意図した使い方がある訳で、それを理解して使うと非常に心強い武器となる可能性があります。
もちろん、作り手が考えもしなかった使い方をアングラー側が見出して新たな境地を切り開く、なんて事も多々あって、それもロッドの面白さなんですが!
カワハギ釣りにはなぜ2本も3本も竿が要るのか?
「カワハギってのはなんで2本も3本も竿がいるんだ?」
というのは、亡くなった父がよく私に言っていた言葉です。
父は船釣りが好きでしたが釣行は年に数回程度で、どの釣り物でも一本の竿で間に合わせてしまえ、と言う大雑把なタイプでした。
ひと昔前、我々の親の世代まではこういう釣り人がかなり多かったように思います。
まぁ、現代は釣りに関する情報も多く、釣具自体も進化して更に細分化が進みましたから、ここまでおおらかな時代ではないのかもしれません。
そんな父でしたから、私がカワハギロッドを何本も買っては試し、実際の釣りにも数タックルを持参する姿を見て疑問を抱くのも分かります。
カワハギ釣りをしなかった父には細かいことを言っても仕方ないので、
「難しいから色んなことをしないといけなし、それには竿が何本も必要なんだよ」
と、いい加減に答えていた訳ですが、これ、今にして思えば凄く的を射ていたと思います。
カワハギ竿が増えても釣果は増えない理由
カワハギ釣りの面白さの一つは、釣り方の幅が非常に広く、それが日によって、はたまた時間によってどんどん変化していくところにあります。
これほどまでにパターン変化が激しく、もはや同じターゲットを狙っているとは思えないほど釣り方が変わってしまう魚も珍しい。
これこそがカワハギ釣りの魅力であり、永遠に極められそうにないと思わされる難しさの要因でしょう。
だからこそ、それに対応すべく様々な道具が開発されて世に出てくる訳ですが、使う側としては道具のバリエーションを増やせば増やすほど頭の整理が大変になってきます。
正にロッドはその代表で私も
「〇〇と言う竿は新しい素材が搭載されて凄いらしいから釣れちゃうかな」
「〇〇さんが凄く良いと言っていたから、この竿があれば釣れるハズ!!」
なんて妄想して何本も(恐らく10本以上 )ロッドを購入しました。
こうして2本、3本と船に持ち込むタックルが増えていきましたが、そもそも経験値が低く状況判断ができていない私の釣果はかえって低迷。
新しいロッドを手に入れた直後の釣行では、朝は「これは イケる」とニヤケていたのに、道具に振り回されてとっ散らかってしまい茫然自失です(笑)
結局何がなんだかわからないまま一日が終わっていました。
策士策に溺れる・・・いや、この場合「屋下に屋を架す」って感じですかね・・・・
状況判断こそが最も重要と知る
冒頭で述べた通り、ロッドには使用する材料や設計によって、製作側が意図した使い方と性能があります。
と言う事は、その性能が発揮されるシチュエーションがある訳で、それを見極めてどう使い分けるのかがアングラー側の課題となるんです。
そして、最適なシチュエーションを見極めるということは、魚とフィールドの状況を読むことであり、それには経験値と観察眼が必要となります。
順序としては
①状況判断
②道具の特性を踏まえて使う
③頭を整理する
といった感じでしょうか。
ところで、当たり前すぎて忘れがちなことを一つ。
釣りの相手は魚であり、彼らに見えているのは主に餌と針とハリスです。
釣り物によっては天秤やビシ等もそうでしょうが、水深が深い船釣りの場合、水中に無いものは見えません。
どんなに素晴らしい道具を使おうが、どれだけカッコよくロッドを振ろうが彼らには全く関係が無いと言えるでしょう。
そして餌の動きは、潮の流れと船の挙動に大きく左右されている。
となれば、意図した仕掛け操作をする為には潮と船の動きを把握することが必須です。
この辺りの事については別の記事にまとめましたのでそちらをご参考いただくとして、状況判断こそが釣りを組み立てるベースになるのは間違いありません。
参考 : 気付けばもっと釣れる!!陸っぱりと船釣りの決定的な違い
ちなみに私は潮流と操船について知るために船舶免許を取得しボートを所有していた時期があります。
実際に自分で船を出し、操船しながら人に釣らせてみたりしましたが、この時の経験は今の釣りに相当プラスになっていると感じています。
そんなこんなで、きちんと腹落ちするまでにそこそこの年数を要しましたが、おかげで最近は混乱して自分を見失うことはかなり減りました。
釣り方の分類とロッドの関係
そこそこ状況判断ができるようになってきたので、次は状況に合った釣り方を当て嵌めていきました。
と簡単に書いていますが、もちろんこれにもかなり紆余曲折がありました。
前回も書いた通り、手感度=『擦過シグナル』による釣りがあまりに楽しいので、それに引き摺られてしまって無理やり低活性の魚をこの釣り方で釣ろうと数年間延々と悩んだり。
しかし、それだけでは攻略不能なことは明らかでしたから、 “擦過シグナル命(笑)” な頭を無理やりリセットして、色々な釣り方を研究していきました。
まぁ逆に言えば、そんなに引き摺られてしまうくらいこの釣りが楽しいってことでもあるんですね。
なので、『擦過シグナルによる釣り』の楽しさ未体験な人には『カワハギ斬-ZAN!!-TypeHH』は超オススメです!!
話を戻しましょう。
頑張って頭のリセットをした甲斐があって、私の中ではカワハギの釣り方が
- 手感度=擦過シグナルの釣り
- 目感度釣り
- 誘い掛け
の3つに大きく分類、整理され、それぞれに使いやすい調子のロッドがあることも明確になりました。
擦過シグナルの釣りにはカーボントップを使用して、ブランクスを吟味してその感度を究極まで高めました。
これにより仕掛けを止めた状態でもシグナルを出せるロッドが誕生。
また、目感度釣りには小さなラインの揺れを可視化する為の繊細な穂先を持ったロッドが向いている。
誘い掛けには大小の誘い幅を自在にコントロールできる柔軟な穂先と穂持ちを持ったロッドが向いている、といった感じです。
シーズナルパターンとしても、盛期(9~12月中旬)には擦過シグナルが発生しやすく、12月下旬から2月下旬が目感度釣り中心の状況に移行。
オールシーズンで出番のある誘い掛けは状況を見ながら速度と誘い幅を変えながら使う、という感じにザックリと考えて組み立てのベースにすると整理がしやすくなりました。
ということで、このような組み立てを行えるように、O.F.Fのカワハギロッドは、現在『カワハギ斬-ZAN!!-TypeHH』と『カワハギ斬-ZAN!!-TypeM』の2機種をラインナップしています。
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