カワハギは「電撃アワセ禁物」!!「聞き上げ」と「スウィープなアワセ」が効く理由
カワハギ釣りにおいては、ガツンと瞬発的にアワセるいわゆる「電撃アワセ」は向かず、「聞き上げ」もしくは「聞きアワセ」と呼ばれる動作が良い、と言われます。
つまり、ゆっくり仕掛けを持ち上げる動作ですね。
たしかにこれはその通りで、普段カワハギ釣りをされている人なら経験的にご存知かと思います。
が、改めて「なんで??」と聞かれると、意外にちゃんと答えられない。
なので今回は、そんなカワハギの「アワセ」について、きちんと論理的に考えてみたいと思います。
針を掛ける位置はどこが良いか?
まず、カワハギの口のなかで針が刺さるのはどこか? というと、大きくは次の4パターンに分類されます。
①歯と歯の間を縫って外側まで貫通
②口の両脇の歯が無い部分(鯛釣りではカンヌキに相当する位置)
③歯の外側の唇のみ
④飲み込まれた場合は口の中や喉の奥等
結局のところ、どこに掛かっていようがカワハギが無事に釣り上げられれば良いので、やれ『上顎じゃないとダメだ』とか、『飲まれちゃいかん』なんて言いっこなし、と個人的には思います。
しかし、③の唇掛かりは大型ほど口切れによるバラシに繋がりやすいです。
たまに唇がぱっくり切れたカワハギが釣れますが、まさにこれは口切れしてバラシたカワハギです。
④は、ハリスが硬い歯で傷つきますから、細ハリスを使えば切られてしまう可能性が高まります。
もちろんなるべくバラシのリスクが少ない位置に針掛かりするのが望ましいですから、理想的なのは①と②となります。
更にこの二ヶ所だと釣り上げた後は外しやすい利点も。
そんな理想的な位置に上手く針掛かりさせるためにはどうすれば良いのか?
そのために必要な動作について次から考えてみましょう。
カワハギの口の構造と針の動き
では、理想的な「歯と歯の間」と「カンヌキ」に掛けるためにはどんなにアワセの動作が必要になるのか?
そこでまず最初に考えなければいけないのが、カワハギには大きな歯があるということです。
釣り上げたカワハギの唇をめくってみるとよく分かりますが、彼らの前歯は人間のそれの様に綺麗に揃って並んでいます。
そしてどんなに鋭い針を使っていようと、この硬い歯自体を貫通することはできません。
ですから電撃アワセをした際に針先が歯に乗っかっていた場合、弾かれてしまうか針先が潰れてしまいフッキングしない、という現象が起こりやすくなります。
では逆に、良い位置に針が掛かるのはどんなメカニズムなのでしょうか?
カワハギが餌と針を口に入れた際にたまたま針先が歯と歯の間やカンヌキの位置にあったから、というのもひとつあると思います。
が、これだけではかなりの運任せ。
確率的に低くなってしまいますが、実際には結構な割合で①と②の良い位置に掛かっていることを考えると説明がつきません。
ここで、とても参考になるのがイシダイ釣りでの針の考え方です。
イシダイと言う魚は、カワハギの比では無いほどの強靭な歯を持っていて、歯と歯の間に掛けるのも困難だといいます。
カンヌキに掛けてやらなくてはキャッチ率が大幅に下がってしまうため、針掛かりに至るまでのメカニズムについてはかなり色々な研究と考察がされています。
そこで言われているのが “針が刺さる場所まで動く” という考え方。
つまり、硬い歯の上を針先が滑ってズレていき、最終的にカンヌキにストンと落ちるイメージです。
この針の動きがカワハギでも起こっていると考えるとしっくりと納得がいくわけです。
で、針にこの動きをさせてやるためには瞬発的な電撃アワセは不向き。
イシダイ釣りではカワハギに比べてかなりゴツい専用タックルを使用していますが、ロッドは概ね長く胴に掛かる調子であり、思いっきりアワセを入れたとしても力を分散して、針の動きをサポートしてくれそうです。
一方でカワハギロッドはどうでしょう。
こちらは穂持ちから胴に掛けては棒の様に曲がらない構造の物が多いですよね。
なので意図的にストロークを取ったスウィープなアワセを行い、針をズラシて良い位置に導いてやる必要が出てくる。
よく「弾いちゃって上手く掛からない」と言う状況が起こりますが、その原因のひとつはこのような針の動きと関係しています。
バラシた際に針先が潰れているという現象は、正に歯の上に乗っかった針先が上手くズレてくれずに弾かれてしまったと言うことでしょう。
そして、ロッドが硬くなればなるほどアワセの動作はダイレクトに針の動きになり “弾く” 現象が起こりやすくなります。
船上でよく聞く「弾いちゃう」というのはこういうメカニズムなんですね。
ですから、ロッドの作り手としてはどんなに硬いロッドを設計しようとも、穂先の先端数センチにはきちんと曲がる部分、いわゆる「掛け代」を確保しておきたいわけです。
カワハギの摂餌行動から見た効率的な仕掛け操作
次はカワハギがアサリ餌を見つけて食べる際の動きからの考察です。
カワハギといえば「餌盗り名人」という言葉が有名ですが、これは裏返すと餌への執着が強い魚ということとも捉えられます。
実際、目の前のアサリ餌が全て無くなるまで仕掛けにしつこく付き纏う、なんて様子を水中映像でも見ることができますよね。
しかしここで電撃アワセをやるとどうなるでしょう?
当然、仕掛けが大きく明後日の方向へ飛んでいっていまいます。
いくらしつこい「餌盗り名人」でも、さすがに視界から餌が消えてしまえば餌を盗ることができません。
そうなれば、仕掛けを見つけて寄ってきて貰うところからやり直し。
非常に効率が悪いんです。
それを解消するのが小さく聞き上げる動作で、 これならカワハギの視界から餌を消すこと無く、完食されるまで何度も掛けるチャンスを作れます。
つまり、カワハギとの勝負の時間が長く取れるわけで、アングラー側が有利になってきますよね。
これはカワハギ釣りにおいてかなり核心になる考え方です。
なお具体的な聞き上げの動作の幅は、ミチイトが張った状態であれば、まずはハリスの長さ分までで行います。
ほとんどのカワハギ仕掛けではハリスは長くて10センチ程ですから、どんなに長くても20cm程度の幅を動かせばカワハギの口に針が触れます。
その感触を確認したら、針をずらしてやるイメージでスウィープに聞き上げ続けて針掛かりを促すわけです。
テンションを抜いた釣り方をしている場合には、ミチイトを張る動作からそのまま聞き上げに移行するわけですが、ここでもきちんとイメージができていないといけません。
「今は弛んだミチイトを張りにいっているところ」「ここから仕掛け(錘)が動き出すところ」と認識しつつ操作することで、せっかく寄ってきたカワハギから餌を遠ざける動きを抑制することができるようになるのです。
ちなみに一番良くないのは “なんとなくやるあまり意味のない動作” です。
例えば、「なんとなく穂先を揺らしてみる」とか、「なんとなく1メーター以上ロッドを持ち上げ続けてみる」とか。
そこに仕掛けの動きのイメージと意図があれば良いのですが、自分の動作主体(つまり癖)で漠然と行うのはNG。
見かけ上の動作が同じでも、ラインの弛みや船の動きを考慮していなければ仕掛けの動きが同じになるとは限らないのです。
参考 : 気付けばもっと釣れる!!陸っぱりと船釣りの決定的な違い
自分の動作ではなく仕掛けの動きを主体に考えておかないと、上手く釣れたとしても「何故釣れたのか?」が曖昧で再現性が微妙になります。
ちょっと話題がずれましたが、何気にここ、超重要です!!!
カワハギのアタリは「今ここに居るよ」というシグナルと考える
上記の内容にも通じますが、カワハギは餌を完食するまで纏わりついてくる、結構しつこいやつ(笑) です。
ですから彼らが餌を啄みだして完食するまでには一定の時間があります。
もちろんこの時間を生み出すためには適切な仕掛け操作、ハリス分の幅までの小さな聞き上げを行ってやることが大切です。
理由は “カワハギが餌を見失ってしまうリスクが少ないから” です。
逆に言えばこれは「アタリがあったらその瞬間に勝負をしないともうチャンスが無いんじゃないか?」と焦る必要がない、ということでもあります。
この時間内に聞き上げの動作で何度も針掛かりを狙って勝負をする。
これでカワハギを掛けるチャンスが倍増し、釣果は向上していきます。
ちなみに・・・・
アタリがあったらすぐにガツンと針を掛けてやらないといけない
アタリがあったら「今こそチャンス」とばかりにあわてて電撃アワセ。
という思い込みは、特にルアーやフライ等の疑似餌の釣りをしてきた人に多いかもしれません。
というのも私がこれだったからです。
掛け数に対してバラシが非常に多かったことと、掛けられなかったらそのアタリは終了と考え、仕掛けを回収して再び投入して一からやり直しになっていたのをよく覚えています。
この思い込みを払拭するきっかけは、同船した上級者の方の釣り方をじっくり監察したことと、その方からのある言葉のおかげでした。
その言葉とは
「焦らなくてもカワハギは餌が残っている限りそこにいるよ」
というもの。
アタリは「それ、今アワセろ!!」というスターターピストルのような合図ではなく、
「カワハギが仕掛けの周りにいる」ことを知らせるシグナルである、ということに気付かせてくれた非常に大きな言葉だったわけです。
このマインドを手に入れてから、私のカワハギ釣りは明らかに変わりました。
時間的優位を得るためのアプローチと聞き上げの重要性
ここまで述べてきたとおり、カワハギが餌を完食するまでには時間的な幅があります。
そして、この時間的な幅をなるべく長く取ることができると我々アングラーのチャンスは増えていきます。
では、優位に釣りを進める為にはどんなアプローチをしたら良いのでしょうか?
まずひとつ目は、前述の通り電撃アワセをせず、カワハギの視界から餌をなるべく消さないように工夫することです。
これによりアサリが完食されるまでしつこく追わせることができますから時間的な幅が出てきます。
そしてもうひとつは “餌を取り始めた挙動” をなるべく初期に察知すること。
通常、非常にシグナルを出し難いカワハギ相手では、ぼんやりと「今仕掛けの近くに居るんだろうなぁ」程度のイメージしか持てないことが多いです。
しかし、もしこれをシグナルとして明確に感じ取ることができれば話しは別。
つまりはカワハギのファーストタッチを察知する、ということですね。
こうなれば勝負できる時間的な幅が最大になります。
そして、それを可能にするのが『擦過シグナル』。
もちろん擦過シグナルが発生するかどうかは、魚の密度や活性、速度と密接な関係にあり、またロッドの材質にもかなり依存しますので、常に誰にでも察知が可能なわけではありません。
参考 : カワハギの手感度アタリの新しい概念 →『擦過シグナル』をガッツリ深掘りしてみる
が、もし適切な釣り方とロッドで挑み、手感度が発生する状況の中でファーストタッチを見つけられたら。
こうなれば、アングラーが圧倒的に優位に立てるので、爆発的な釣果を得ることも夢ではなくなります。
そして、このふたつのアプローチに欠かせない動作が “小さな聞き上げ” と “スウィープなアワセ” なのです。
まとめ
ということで、今回はカワハギ釣りの基本動作である “小さな聞き上げ” と “スウィープなアワセ” の重要性について考えてみました。
特に針の動きについては以前からイシダイ釣りの関連記事等を読んで、意識して仕掛け操作をしていたんですが、こうして記述してみることでより頭が整理されますね。
もちろん、胴に掛かる調子のロッドなら電撃アワセ気味のアワセでもカバーしてくれそうですから最終的には各人のスタイルになります。
が、バラシに悩む時にはひとつの指標になること請け合い!!
頭の片隅にでも置いておいていただけるとよいかな、と思います。
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