【カワハギ釣り】カーボンソリッド穂先についてあれこれ語ってみます!
O.F.Fのカワハギロッド『斬-ZAN!!-』は穂先にカーボンソリッドを採用したモデルですが、これについて多くのお問い合わせをいただきます。
特にこれまでカーボンソリッド、とりわけ『斬-ZAN!!-』のような硬度の高いカーボン素材で作られた穂先(後ほど解説します)を使用したことがない人にとっては未知の領域。
ですから「そもそも何が違うのか?」や「自分の扱い方で大丈夫だろうか?」などの疑問や不安を持つ人が多いようです。
ですので、今回は今一度カーボンソリッドを搭載したカワハギロッドについてざっくりと解説しつつ、更に詳しい過去の関連記事へのリンクを貼っていきます。
大枠を押さえつつ、もっと詳しく知りたい方の入り口にしてください。
なぜカワハギロッドにカーボンソリッドを使うのか?
『カワハギ斬-ZAN!!-』のコンセプトをひとことで表せ、と言われた場合の私の回答は
「とにかくカワハギの気配を感じながら楽しむためのロッド」
となります。
そして、それを支えているのがカーボンソリッド穂先です。
現在、カワハギロッドの穂先に使われるソリッド(無垢)素材はカーボンの他にグラスとチタン合金がありますが、素材それぞれに特徴があり、作り手は「そのロッドに何を求めるのか?」によって搭載する素材を決めていく、というのは以前の記事にも詳しく書きました。
関連記事 : カワハギ竿には作り手が意図した使い方がある
ここで簡単におさらいしてみましょう。
カーボンソリッドを使う理由はズバリ「ロッドを通して伝わる情報量の多さ」です。
そして、その源となっているのはカーボンという素材が持っている『硬度』の高さ。
硬度が高いことが実釣に及ぼす利点は主にふたつあります。
そのひとつ目は、海底形状がとてもクリアに把握できるようになるということ。
特にO.F.Fでリリースしているカワハギロッドで最も高感度であるTypeHHは、海底に落ちている石ころひとつを明確に感じ取ることができる強力な解像度を誇ります。
そしてもうひとつの利点が、カワハギ特有のシグナル=『擦過シグナル』を捉えてくれること。
これらふたつの特徴は、実際のフィールドにおいて非常に大きな武器になるとともに、カワハギ釣りが持つ独特の楽しさを、より多く我々釣り人に与えてくれるのです。
『擦過シグナル』とカーボンソリッド
カワハギ釣りにおけるカーボンソリッド穂先の使用が最も活かされるのが、カワハギの歯と針が擦れて発生するカサカサ、チリチリ、というシグナル=『擦過シグナル』の素早い察知です。
ホバリングしながらピタリと餌を追尾するので普通のアタリをなかなか出してくれないカワハギですが、この擦過シグナルを早く察知できることで釣り方の幅が一気に拡がります。
そして、このシグナルを指標にして針掛かりまで持ち込む駆け引きの楽しさは格別。
個人的には、ルアーでのトップウォーターフィッシングやサイトフィッシングに相当する楽しさに似ていると感じています。
もちろん常にこれらの釣り方が万能なんてことはなく、常にハマるわけではないので注意が必要なんですが、とてもエキサイティングで中毒性が高く、ともすると釣果はさて置いてこればかりやってしまう、なんていうところも凄く似ていると思います。
関連記事 : カワハギの手感度アタリの新しい概念 →『擦過シグナル』をガッツリ深掘りしてみる
なお、私のカワハギロッド遍歴は、入門当時は7尺(2.1メートル)の和竿と和竿テイストのグラスソリッド穂先のもの(これらはかなりの本数を試しました)でした。
次にチタン合金穂先の1.8メートルのものに移行し、ここまででもかなり楽しい思いをしてカワハギ釣りにのめり込んでいました。
そんな時、カーボンソリッドトップのロッドを使用する名人と隣り合っての釣りを経験します。
その日は魚の活性が高く全体に釣果が伸びた日なのですが、名人は私がまだ全く感じ取れていないシグナルを先に捉えて「あ、ほら居る居る」「触ってるよ」と言いながら常に先に掛けていきます。
私はそれに遅れること数十秒でやっと気配を感じて掛ける、といった構図となりました。
釣果はどんどん離されていき、終わってみると十数枚差で全く太刀打ちできず、なるほどこれが素材の差か!?と戦慄。
そして矢も盾もたまらず手に入れたカーボンソリッド穂先搭載ロッドを握っての次の釣行。
その日は、カーボンソリッドによる擦過シグナルの多さと伝達されるまでの早さに、掛けるタイミングがわからなくなって巻きバラしを多発したのをよく覚えています。
そして、数回の釣行でタイミングが合ってくると、もう擦過シグナルの釣りの虜となり、以降はカーボンソリッド穂先のロッド一辺倒となって現在に至る、という感じです。
カーボンソリッドの弱点
そんな楽しさ満点のカーボンソリッド穂先ですが、もちろん弱点もあります。
1番の弱点は『他の素材に比べて折れやすい』ことが挙げられるでしょう。
これは素材特性の観点から見た時、絶対に覆らない「硬度が高い素材は脆い」という事実からきています。
逆に粘り(靱性)があり、曲げに対して強い素材の硬度は低く、これを穂先に使えば「折れに強い」という利点が生まれる。
硬度と靭性の関係は工業系のお仕事や学校で勉強した方ならよくご存知のことかと思います。
(ちなみにカーボン以外の素材であるグラスソリッドとチタン合金の硬度は非常に低いです)
関連記事 : 【カワハギロッドは穂先素材で決めろ!!】ロッドビルダーが教えるカワハギタックル選び ~前編~
関連記事 : 【カワハギロッドは調子で決めろ!!】ロッドビルダーが教えるカワハギタックル選び ~後編~
また、同じカーボンソリッドでも低反発の物や折れにくさを求めて靭性を上げた物は、どうしても受け取れる情報の解像度が低くなっていきます。
もちろん最終的にはカワハギ釣りをどのように楽しむのか?という嗜好の領域になってくるわけで、何がなんでもカーボンソリッドによる高解像度が必要な訳ではありませんし『擦過シグナル』が絶対に必要なわけでもありません。
とはいえ、一度カーボンソリッドによる情報量の多さを体験してしまうと、その楽しさからなかなか逃れられない(笑)
そんなわけで、カーボンソリッドユーザーとして破損のリスクを減らしていくにはどうしたら良いのか? を考える必要が出てきます。
本質的にカワハギロッドは穂先に無理が掛かりやすい構造である
本来、釣り竿のような曲げて使用する物は、破損し難いようになるべく全体的に負荷を分散する構造を取るのが理に適っていて、多くの物がそのように設計されています。
しかし皆さんご存知のとおりカワハギロッドはそうなってはおらず、極先調子という力学的には結構無茶な構造をしています。
穂先だけが曲がるので、その部分に集中して負荷が掛かる「そもそもが折れやすい構造」になっています。
これは、アタリを出さないカワハギに対することを最優先に試行錯誤された結果。
つまり、進化の過程でカワハギを釣るためには理に適った構造になったものの、負荷分散という意味ではあまり良い構造では無くなったということ。
そんなわけで、我々の扱い方がよりシビアに試されてしまう、というのがカワハギロッドなのです。
なお余談ですが、先調子とは「使用時に先の方が曲がる調子」のことですから、全体が硬く穂先が曲がらないものはこれにはあたりません。
更に負荷を掛けていけばロッド全体が均一に曲がり出しますから、胴調子寄りということですね。
これ、実は結構誤解している人が多いです。
カーボンソリッド穂先を折る原因
では話を戻しましょう。
カーボンソリッドはその感度と引き換えに「折れやすさ」という弱点を宿命として持っているわけですが、それでも正しい使い方をしていれば全く問題なく使用できるのです。
というのも、私を含めてカーボンソリッド穂先のカワハギロッド愛好家には穂先の破損がほとんど無い、という事実が厳然としてあるからです。
ちなみに私の例を挙げると、今までに折ってしまったカワハギロッドの穂先は、強度テスト用に作った極端な調子の物を除けば3本です。
その内訳は、穂先絡みによる事故が1回と、使い倒した穂先の寿命による破損が1回、そして「こうやったら折れますよ」というデモンストレーション時に本当に折れてしまった1回です。
ちなみに仲間内には、未だかつて一本も折ったことのない強者も居ます。
では、折る人と折らない人の違いはなんなのかというと、それは『ロッドの扱い方』です。
既に述べてきたように、素材の特性としてカーボンソリッドは脆い=折れやすい、ということになりますが、それは他のふたつの素材(グラスソリッドとチタン合金)との比較によるものに過ぎません。
要は、他のふたつが非常に折れにくいからカーボンが相対的に「折れやすい」と言われているのです。
「他の素材ではそんなに折れないのに・・・」という人は、常に穂先にダメージのある扱い方をしているが、カーボン以外だと素材の折れ難さがカバーしてくれている、ということですね。
言い換えれば、カーボンソリッド穂先をよく折る人は他素材のロッドにもダメージを日常的に掛けてしまっているわけで、やはり破損のリスクは高いと言えます。
チタン合金がある日突然ポロっと折れるのは金属疲労が蓄積された結果にほかなりません。
これについては『折り癖のある人』ということで記事にしていますのでぜひご一読ください。
参考 : よく穂先を折る人必読!!ロッドビルダーが教える破損防止法
穂先は『鋭角に曲げる』と折れるもの
では具体的に、穂先はどんな時折れるのでしょうか?
これは上記に挙げた過去記事でも詳しく書いていますが、ひとことで言うと
鋭角、つまり「し」の字に曲げた状態で更に力を加える
です。
穂先の折り癖がある人は動作の中のどこかで自分でも気付かないうちにこの状態を作ってます。
いやこれ、どんなに本人が「そんなことない!」と言い張っても、100%絶対、マジで、やってしまってます。(大事なのでしつこく言いました笑)
例えば薪に使う木の枝を半分に折ろうとする時、端と端を待って緩やかに曲げる人は居ません。
当然、折りたい部分の一点を鋭角になるように曲げて折るはずです。
ですから多くのロッド破損は「折れた」ではなく「折った」なのです。
折らないために注意すべきポイントは?
では、具体的にどうしたら良いのでしょうか?
そのポイントになるのは以下の2点です。
①巻き込みや穂先絡みなどの事故
②穂先とラインの作る角度=アングルの管理
①は事故、つまりミスで、落ち着いて気をつけることしかありません。
これは特に歴の浅い頃の緊張や焦りからやってしまいがちですが、慣れてくると滅多に起きません。
で、問題なのは②で、折癖のある人は無意識に穂先で「し」の字を作ってしまっていることに気づいていない。
ですからまずは自分の扱いの悪いところを見つけて修正しないといけません。
なお、釣りの最中に最も破損の要因になると思われるのが魚の取り込み時にロッドを顔の前で立ててしまうことで、かなり多くの人(おそらく7〜8割)がこれをやっています。
正しい取り込みについては動画で詳しく解説していますのでご参考ください。
動画リンク : 【カワハギ釣り】穂先折れ回避術!!ロッド破損を劇的に減らす四つの方法とは??
長年の釣行で染みついた悪い癖を治すのはなかなかしんどいですが、きちんと矯正できればとてもお財布に優しいです。
そして何より、正しいアングル管理は実は超重要な基礎であり、身につくと釣果も向上してしまう、という素晴らしいオマケがついてきます。(というか本来はこっちがメインですね)
そんな重要なアングル管理には、それを身につける為のきちんとしたセオリー『G.F.A理論』があります。
参考 : 船小物釣り上達の絶対的な秘訣!!G.F.A理論とは【前編】
参考 : 船小物釣り上達の絶対的秘訣!!G.F.A理論とは【後編】
ちなみにGはグリップ、Fはフォーム、Aがアングルの略です。
まとめ
ということで、今回はカーボンソリッド穂先を使ったカワハギロッドについてざっとまとめてみました。
カーボンソリッドの穂先はシグナルの入力にはとても優秀で利点が多いですが、素材としては扱いにシビアです。
が、これを使い熟せるということは、結果として釣り人としてのレベルがひとつ上がる、ということにつながりますので、是非チャレンジしてみてください。
特に斬-ZAN!!-シリーズや、カーボンソリッドトップのカワハギロッドにご興味がある方は過去記事も含めて参考にしていただけたらと思います。
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