【カワハギロッドは調子で決めろ!!】ロッドビルダーが教えるカワハギタックル選び ~後編~

 

「カワハギ釣りもそこそこの回数こなしたし、そろそろエントリーモデルじゃ飽きたらなくなったなぁ」

 

「何本かのロッドを使い分けると良いと聞いたけど、具体的な使い分け方がピンとこないんだよな」

 

「ロッドはなんとなくフィーリングで持ち替えてるけど、いまいち替えどころがわからない。でも今更そんなの聞けないよ」

 

この記事はそんなカワハギ師のあなたにうってつけです。

 

かつてカワハギ釣りに悩み抜き、数十本のロッドを購入して研究、ついにはロッドビルダーになってしまった私が作り手ならではの客観的な視点でロッド選びについてお伝えしていきます。

 

 

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後編となる今回は、ロッド選びを【調子】の観点から紐解いていきます。

ちなみに前編では【穂先素材】の観点から整理していますので、未読の方は併せて読んでいただくと更に理解が深まるはず!

 

前編 : 【カワハギロッドは穂先素材で決めろ!!】ロッドビルダーが教えるカワハギタックル選び ~前編~

カワハギロッドは釣法にあった調子が必要

ではまず結論からいきましょう。

 

それは

「ロッドの調子は釣法にあわせて選ぶべし」

です。

 

もう少し具体的に言うと、

 

  • 誘い掛け&目感度で釣る = 軟調子寄りのロッドを選ぶ
  • 手感度シグナルを拾う = 硬調子寄りのロッドを選ぶ

 

のふたつになります。

  

とてもシンプルな内容ですが、ここをきっちりと論理的に説明できる人は、実は上級者にもそれほど多くありません。

なぜなら上級者の多くはもともと優れたセンスがあることに加え、豊富な経験に基づいて感覚的に釣りを組み立てているからです。

もちろんそんな方々は、実際に釣りをさせたら圧倒的な実力を発揮するわけですが、非常にパーソナルな感覚を拠り所にして組み立てているので、なかなかその肝となる部分が他人には伝わらないものなのです。

この辺りのことについては以前の記事でも触れていますのでご参考ください。

 

参考 : カワハギ釣り上達に!!『誘い掛け』マインドの必要性

 

とはいえ、諦める必要はありません。

エキスパート達が何を感じ取り、何を考えて組み立てているのかを詳しく見聞きし、それを論理でたどることさえできれば、我々も最速でそこに近づくことが可能で、これはロッド選びの基準にも同じことが言えます。

  

ということで次からは、その論理をひも解いていきましょう。

 

 

ロッドの調子と操作性の関係

カワハギ釣りでロッドの調子が変わると大きく変わることのひとつが仕掛けの操作性です。

そしてこれは “釣り人が意図した操作が行えたかどうか?” で評価されます。

 

わかりやすく言えば、「自分が思い描いたイメージで仕掛けを操作できるロッドかどうか?」ということですね。

 

上手く操作できれば良いロッドになりますし、出来なければダメなロッドと言われてしまいます。

例を挙げてみましょう。

 

例1
“胴突き仕掛けの錘を海底に置いたまま餌を小刻みに動かすアクションをしたい場合”

穂先から穂持ちは比較的柔軟な調子の方がメリハリの効いた仕掛け操作をしやすい。

硬調のロッドでは、仕掛け操作時に錘が不必要に移動してしまったり、仕掛けが暴れすぎてしまいコントロールし難くなる。

 

例2
“宙釣りで数センチ単位の緻密な上下動を演出したい場合”

無駄な動きの出ない全体に硬めの調子が操作しやすい。

軟調ロッドでは、穂先から穂持ち部分がボヨンボヨンと必要以上に動いてしまいイメージ通りに操作し難くなる。

 

 

このように、釣り方にはそれに合った使いやすい調子というのがあり、これがピタリとハマっていれば釣果に繋がりやすくなる = 良いロッド と評価されるわけです。

そして、ロッドの作り手はどのようなアクションで釣るのが良いか?を想定して調子を決めていきます。

つまり、カワハギロッドにはある程度想定された使い方がある、ということでもあるわけです。

 

参考 : カワハギ竿には作り手が意図した使い方がある

 

もちろん想定外の使い方をアングラーが見つける場合もあり、そこがまた面白いところでもあるんですが、そのあたりは予測不能なのでここではいったん置いておいてください。

 

 

誘い掛けは調子が命!!

カワハギの誘い掛けには調子の選択が肝となります。

 

先ほど挙げた例1がまさにその状況。

水中で静止、またはピタリと追尾して餌を食べることができるカワハギは、なかなかアタリを出してくれません。

そこで、

相手が引っ張らないないなら、こちらが引っ張ってやればアタリになるだろう

というのが誘い掛けの基本的な考え方です。

餌に適切な動きを与えてやり、カワハギの口の中に針先を接触させてやれば良い、というわけですね。

 

そして、そのためのロッド操作には、その日の潮流やカワハギが餌を追尾する速度によって調整が必要です。

 

仕掛けの位置を安定させ、カワハギの視界に餌を留めつつも、咥えた際には針先が口の中にぶつかる。

そのための代表的なアクションは、

 

  • 錘をボトムにつけた状態でラインテンションを抜いては張る、抜いては張るを繰り返す
    → ツンツン、チョンチョン、フワフワ、ブワンブワン等(状況に応じて中錘や集寄も使用する)
  • ゼロテンションでステイした後に聞き上げ
    → じんわり聞き上げ、スッと聞き上げ、素早く聞き上げ、電撃アワセ等
  • 錘を浮かせて宙でフワフワと餌を動かす

 

などが代表的。

 

そしてこれらのアクションを、動きの大小、強さ、速度を変えて行い、状況にアジャストしていきます。

つまり、ロッドでのコントロールに幅が必要で、その幅をカバーするために穂先から穂持ちにかけての適度な柔軟性が必要不可欠になってくるというわけです。

そのため、これら誘い掛けのアクションを実践するには穂先から穂持ちにかけて比較的軟調子のロッドが適しています。

誘い掛けにおいてはロッドの調子による仕掛けのコントロール性能が、釣果に大きく影響することがお分かりいただけたかと思います。

 

では目感度釣りと手感度釣りには調子は影響するのか? というともちろん影響します。

が、影響するのは調子によるコントロール性能ではありません。

というのも極端な話し、どんな調子であろうともそれぞれのシグナルをアングラーに伝えてくれさえすれば良いからです。

というとこで、次は調子と感度の関係を見ていきましょう。

 

 

ロッドの調子と感度の関係

もうひとつ、調子によって大きく変わるのが感度です。

 

とはいえ、単に「感度」というフワッとした概念だけでは意味がわかりませんので、ここでまずは感度の種類をきちんと把握しておく必要があります。

カワハギ釣りにおける感度の種類は『ノーマル感度』『手感度』『目感度』の3つです。

これらの違いについて更に詳しく知りたい方は下記も参考にしてください。

 

参考 :カワハギの手感度アタリの新しい概念 →『擦過シグナル』をガッツリ深掘りしてみる

参考 : 勘違いが多い!?本当のカワハギの目感度を本気で解説

 

なお、一般的な”いわゆるアタリ”を伝えるノーマル感度は、それなりのスペックを備えたロッドであれば基本的にどれでもきちんと捉えることが可能です。

ですので、ここでは特殊なシグナルである『目感度』『手感度』に絞って見ていくことにしましょう。

 

 

目感度は穂先の繊細さに注目

目感度はひとことで言うとラインの揺れを穂先で見える化したもの。

であれば、理屈上は穂先は細ければ細いほど良い、となります。

が、これは机上での理論であり、実際の現場では細すぎる穂先には問題が出てきます。

 

ひとつはノイズの増加

風や船の揺れはもちろんのこと、根回りではボトム変化を拾いすぎてしまいます。

特にカワハギ釣りは横の動きを多様するため、マルイカの本格ゼロテンロッドのような極端な目感度特化穂先はかえって使い難くなってしまいます。

 

そしてもうひとつは耐久性の低下

細くすればするほど穂先はちょっとした衝撃で破損します。

なので極端に細い穂先では近年のカワハギ釣りでは欠かせないキャストや、多彩な誘いのアクションも難しい。

 

これらを考えあわせると、

なるべく折れ難い素材で、操作に支障のない範囲で細く柔軟な穂先を搭載する

というのが、目感度シグナルを捉えるためのカワハギロッドに求められる要素になります。

 

なお、誘い掛け向きの穂先の柔らかいロッドは同時に目感度アタリも伝えやすくなりますので、これらの釣法の相性は抜群です。

具体的には、誘い掛けの動作の途中にステイを入れ、穂先の揺れを見ていく流れ。

これで組み立てが非常に効率的になるわけです。

 

ちなみに、O.F.Fでリリースしている目感度と誘い掛けに対応した『カワハギ斬-ZAN!!-TypeⅯ』は、本来これらの釣りには向かないとされるカーボンソリッドを敢えて採用。

その理由はカワハギ特有の手感度アタリである擦過シグナルを察知して、釣り方の移行をスムーズに行うためです。

扱いには少し気を使いますが、その利点は明らかです。

 

 

手感度と調子の関係

手感度の中でも擦れたようなアタリ、つまり『擦過シグナル』はカワハギ特有のものだ、というのは他の記事も含めて何度か述べてきました。

そして[前編]でも書いた通り、この伝達にはカーボンソリッドが最も適しています。

しかし、いくらカーボンソリッドを使っていても、調子が適していなけれは擦過シグナルは減衰して手元まで届きにくくなります。

 

では擦過シグナルの伝達に適した調子はどんなものなのか?というと、これはズバリ 硬いこと です。

 

硬度の高いカーボンソリッドを使用していても、ロッドの全体的な調子が柔らかくよく曲がるものだと、やはり振動が逃げてしまうのか、手元に届きにくくなっていきます。

なので、このシグナルに特化したロッドを作ろうとすると、穂先素材がカーボンであることに加え、全体に硬調なものが必要になってくるわけです。

 

ちなみにO.F.Fでリリースしている2種類のオリジナルロッド『カワハギ斬-ZAN!!-』は、どちらも穂先にカーボンソリッドを使用しています。

しかし、軟調なTypeM硬調のTypeHHでは、擦過シグナルの伝達において明らかにTypeHHに軍配が上がります。

TypeHHの擦過シグナルの感度を10とした場合、TypeMは4〜5といったところ。(それでもカーボン以外の穂先素材のロッドよりは断然良くわかります)

もしTypeMでの誘い掛け&目感度の釣りの最中に擦過シグナルを見つけた場合は、状況の変化が予想されます。

そこですかさずTypeHHに持ち替える、といった具合に組み立てを行っていくわけです。

 

 

まとめ

前後編に分けて作り手の視点でのロッド選びをお送りしました。

 

カワハギの攻略にはロッドの持ち替えは今や必須項目。

もちろん一本のロッドで全ての釣法をカバーできれば素晴らしいのですが、そんなロッドは今のところ存在しません。

その理由は、カワハギの泳ぎ方と摂餌方法の特異性によるもの。

これに対応するためにカワハギ釣りには現在、『誘い掛け』『目感度』『手感度』という3つの特性の違うアプローチがあります。

それぞれが理に適った方法となっていますが、カバーできる状況と季節が変わってきます。

 

この3つのアプローチのうち最も状況と季節を広くカバーできるのが『誘い掛け』で7割程度『目感度釣り』『手感度釣り』は3割程度といったところ。

つまりオールマイティーな方法はありません

 

したがって、それぞれを補完するためにロッドを使い分ける、ということが数を狙うには不可欠になるということですね。

ロッド選びに迷う全てのカワハギ釣り師の皆さんの参考になればと思います。

 

【素材】と【調子】という客観的な指標で考えることで、頭の中をシンプルに整理できるので、単にロッドを選ぶということだけでなく、釣り場での戦略の立て方にもプラスになること請け合いです。


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