【シロギス】天秤と胴突きの使い分け方について
船シロギス釣りについて、ここ数年で「天秤と胴突き」それぞれの仕掛けの使い方についての質問を多くいただくようになりました。
これは、胴突き仕掛けの認知度が高まってきたことによるもので、以前は船シロギスの仕掛けと言えばほぼ天秤一択だったように思います。
ちなみに、私が船シロギスを始めた際に通った船宿は千葉県寄りのポイントに行くことが多く、船長を始め、名人、常連さんの全員が天秤仕掛けを使用していました。
そしてこれは多くの船宿でも同様であり、かく言う私も特段疑問を持たずに天秤オンリーで釣りを覚え、胴突き仕掛けを本格的に活用するようになったのはかなり後になってからだったのです。
その一方で、同じ東京湾でも比較的西側、つまり神奈川県寄りのポイントを主戦場とする船宿の一部では胴突き仕掛けによるシロギス釣りが行われていて、それが近年は湾内全域に広まってきた感じです。
このようにメインとする釣り場によって仕掛けの選択が違うというのはとても興味深いところ。
こうなった要因についてはいくつか考察もあるのですが、それについてはまたの機会に詳しくするとして、今回はそれぞれの仕掛けの特徴とその利点、そして具体的な使い分けの方法を考えてみたいと思います。
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◆使い分けの基本
まずは最初に結論からいきましょう。
使い分けの基本は
①夏は天秤
②冬は胴突き
です。
もちろん季節以外の要因も関わってきますから一概に全てこの通りにはなりませんが、傾向としてはこの2つが当てはまりやすいのは間違いありません。
また、これにはきちんと理由があるので順次説明していきますね。
それから、春と秋はどうなのか?と言えば「どちらとも言い切れない」というのが本音。
したがって、あまり固定観念に捉われずに試してアジャストする、というのが正解に近付く早道となります。
いずれにしても、それぞれの理由をしっかり理解することで応用が利くようになりますので、この先の解説を是非参考にしてください。
天秤仕掛けの特徴と利点
先に書いた通り、私も結構最近まで「シロギス釣りといえば天秤仕掛け」と認識していたのですが、古くからやっている人の中には私と同じ感覚の人は結構多いと思います。
実際、東京湾の船シロギス最盛期となる夏場、東寄りの主戦場たる木更津周辺から超浅場となる盤州周りでは、明らかに天秤による釣りが強く感じられることが多くなりますが、その最も大きな肝になるのが「魚の密度」です。
このメカニズムは、産卵を意識して浅場に集まってくることでシロギスの密度が高くなり、餌の取り合いが起きる、ということに由来します。
野生の生き物の多くには、目の前にある餌が他の仲間に取られることを嫌う、という側面があり、一匹でいる時にはそれほどそそられていなくとも、誰かに取られるくらいなら自分が取りたい、という競争心を煽られてしまう。
生存本能ですね。
もちろん、そもそも食欲旺盛であれば落ちて来た餌に即反応しますから釣りの難易度は下がります。
が、それほど食欲が無い場合にも、誘いを掛けて興味を惹いてやる。
これで一匹でも反応してくれれば、その動きが呼び水となって周りの魚に競争心が働き取り合いが起きる = リアクションバイトが誘発される、というのが誘いによる釣果アップのメカニズムのひとつ。
そして、これを活かして数を稼ぐには天秤仕掛けがとてもマッチするのですが、その秘密はシロギスの泳層と仕掛けの構造にあります。
シロギスは通常、海底ベッタリから20センチ程度の範囲を泳いでいます。
そして、天秤仕掛けは吹き流しで仕掛けを接続している構造上、このレンジを捉えるのがとても得意です。
と言うより、仕掛けを大きく持ち上げた時とその後のフォール中以外は、操作の有無に関わらずほぼ強制的に付け餌がこのレンジ内に入っている、と言ったほうが正確でしょうか。
つまり、シロギスの視界に餌を入れてやることに関してはとても理に適っているんですね。
また、二本針の両方の餌をほぼ同じレンジでキープしつつ誘いが行えますから、ダブル率も上がりとても効率良く数が稼げるわけです。
なお、天秤仕掛けを主体にシロギス釣りの基礎である「誘い掛け」の考え方を記した記事も是非参考にしてください。
胴突き仕掛けの特徴と利点
胴突きは仕掛けの一番下に錘が接続され、それよりも上に枝スを出して針を取り付けた仕掛けですから、ハリスとミチイトの間に錘や天秤等の大きなものを介していません。
この構造は
①アタリがスポイルされない
②小さい動きを仕掛けに伝えやすい
という2つの利点をもたらします。
順番に見てみましょう。
①アタリがスポイルされない
これは多くの人がイメージしやすい胴突き仕掛けの特徴だと思います。
天秤仕掛けであれば魚が付け餌を加えて動き、それがハリス→天秤(錘)→ミチイト→ロッド、と伝わりますが、胴突き仕掛けはその途中に天秤や錘が無いことでとても伝わりやすくなる。
つまり、より大きくアタリが出るであろうと考えられるわけです。
ですから、それを活かした釣り方を目指す、というのがこの仕掛けを使うひとつの理由であり方向性と言えそうです。
特に魚の側が出してくれるアタリ = 仕掛けは止めた状態で魚が餌(針)を引っ張る際に現れるアタリの伝達においては、間違いなく胴突きに分があるでしょう。
が、実はシロギスという魚の捕食行動を考えると、胴突き仕掛けの利点が最も活きるのはここではありません。
その理由は「餌を吸い込む」というシロギスの捕食方法にあります。
ひと口で全て吸い込んでそこから泳ぎ去ろうとした際にはハリスが引っ張られてアタリになりますし、餌のイソメが大きすぎて口に入り切らなければ、ある程度吸い込んだところで首を振って引きちぎろうとしてハリスにテンションが掛かりこれがアタリになります。
また、いわゆる「居喰い」においては、シロギスが餌を吸い込んだ後もその場に留まり針は口の中に入っています。
そこで釣り人側のアクション= 誘い or 聞き上げ によってテンションが掛かると、これが竿先に伝わりアタリとして表れます。
このように多くの場合においてシロギスのアタリは、ハリスにかなりしっかりとしたテンションが掛かるものです。
つまり、胴突き仕掛けの「アタリをスポイルしない」という利点からは、特定の条件下(※)を除いてシロギス釣りにおいては劇的にアタリ数を増やす効果はあまり期待できないのです。
そもそも狙っているのは同じシロギスなのですから、天秤・胴突き、どちらの仕掛けにおいても「誘い掛け」を主体に組み立てるのが正解と言えます。
ここを理解せずに「胴突き仕掛けにして小さいアタリを取ってやろう」とロッドをビタ止めして延々と穂先を凝視する、というのは入門後に陥りやすい間違いですので気を付けましょう。
※ちなみに特定の条件下とは、低活性や二枚潮など、非常に厳しい状況が重なった際の特殊な釣り方において、と言うことです。
②小さい動きを仕掛けに伝えやすい
針とミチイトの間に天秤や錘を介していないという特徴により得られる胴突きの利点のもうひとつが、小さな動き(誘い)を仕掛けに伝えやすい、と言うことです。
天秤仕掛けの場合、付け餌にアクションを加えるにはどうしても天秤と錘を動かしてやる必要があり、それにより仕掛けは手前に寄って来る → 横移動の発生を避け難いのです。
しかし、胴突きの場合は錘を横移動させない、若しくは極力抑えた状態で仕掛けだけを動かす「定点誘い」を演出することができます。
例えば、錘が動かないようにラインテンションを緩めた状態で、仕掛けだけをゆらゆらと揺らす誘いなんかがそれです。
そしてこれは餌の横移動に着いて来ない低活性なシロギスに対して非常に有効な誘いとなります。
胴突き仕掛けが冬に強いというのは、この特性を活かして釣りを組み立てることができるから、ということなのです。
では、夏場に胴突き仕掛けの使用はどうか?というと、もちろん問題無く使えます。
が、浅場での数釣りという点では、先に触れたようにシロギスの泳層を2本針で効率良く直撃できる天秤に軍配が上がることが多くなるように感じます。
◆仕掛けを「動かす or 動かさない」について改めて考える
あまり喰い気の無い魚を相手にする時、よく言われるのが「仕掛けを動かさずにじっと待て」というやつですね。
しかしこれは一面では正しいのですが、別の方向から見ると間違いであるとも言えます。
と言うのは「動かす」とう言葉には、大きく分けて次のふたつの意味があるからです。
①「餌の位置の移動」
②「餌自体の動き」
単に「動かさない」と言うと、ロッドアクションを完全に止めていることをイメージしますが、その場合仕掛け、そして餌(針)は完全に静止しています。
潮や船の動きで意図せず動くこともありますが、ここではわかりやすくするためにその要素はいったん置いておいて話しを進めますね。
仕掛けに全くアクションを加えずに一定の時間が経過すると餌は静止しますが、これは言ってみれば海底にたくさんある「その辺の何か」と同じになってしまう、ということを指します。
もちろん餌の匂いで反応してくれる場合もありますが、そもそも低活性=魚に食欲があまり無い。
つまり餌に対して意識が向きにくい状態なので、匂いだけでは効かないことも多いのです。
そこで魚の興味を惹くため「誘いを入れてやろう」となるんですが、かと言ってガンガンに誘ってやれば良いかというとそうはなりません。
そう、そもそも魚に喰い気がないので移動する餌を追いかけては来ないからです。
ですから、餌は魚の目の前に置きつつも、一定の動きを与えて興味を引いてやる必要が出てくる。
これを言い換えると
・餌の位置は移動させない
・餌自体を動かす
のふたつを両立させる、ということになります(これは先程説明した胴突き仕掛けでの定点誘いですね)。
このように、従来通りの表現だけで「仕掛けを動かさない」と一括りにしてしまうと、発信側と受け手側の解釈がちがってしまう、という問題が発生します。
加えて、上級者ほど自分の優れた感覚によって釣りを組み立てていて、その感覚のまま説明しようとするので受け手側にも同様のスキルが無いと理解が追いつかない、ということが起こります。
これはシロギス釣りに限らず、スポーツとしての発展が遅れている船釣りの世界で頻出する言葉の齟齬ですが、きちんと分解し整理して共通言語化することで、このような事態を防ぐことが可能になります。
これについてはカワハギの記述中でも触れているのでご参考ください。
関連記事: カワハギ釣りに悩んだらまずこれをやれ!!最強メソッド『誘い掛け』とは!?
関連書籍: ロッドビルダーが教える~カワハギ釣り上達への道~本気の人が読む【カワハギ釣りの教科書】
話を戻しましょう。
ここまで説明した通り「低活性では動かさない」と言われると、多くの人が「誘いの動作=アクションを入れてはいけない」という意味に受け取ってしまいます。
しかし実際には「仕掛けの移動を止める」という表現が適正であり、必ずしもアクション禁止では無いのです。
是非「動かす」「動かさない」という抽象的な思考から、「仕掛けの移動」と「餌の動き」という具体的な思考へ頭を切り替えましょう。
ハリスの長さと向き
先に述べた胴突き仕掛けによる定点誘いを除き、基本的には誘いを入れることで仕掛けは手前に寄って来つつ、同時に水の抵抗でハリスは張っていきます。
仕掛けが張っていることで、誘いを掛けた際にシロギスの口の中に針が入っていればすぐに察知できるわけで、これが『誘い掛け』でアタリを出すための最も基本となる部分です。
が、ここに船の動きを加えると少し事情が複雑になってきます。
自分の釣り座が右舷だとして、船が右舷側へ流れていた場合を例に考えてみましょう。
図の位置関係では、キャスト後に船が仕掛けの方へ近づいていき、ミチイトが弛んでいきます。
この状態で少々ロッドを動かしてみても、それが仕掛けに伝わり難いのがお分かりでしょう。
つまり、船の動きを理解せずに同じロッド操作を行っても、同じアクションを仕掛けに与えられない、ということになります。
関連 : 気付けばもっと釣れる!!陸っぱりと船釣りの決定的な違い
また、ミチイトと同様にハリスも弛んでいる可能性が高くなります。
もちろんこれには底潮の流れが絡みますから、たまたま誘っているのと逆方向(図で言えば右舷方向)に底潮が流れていれば自動的にハリスが張った状態になりアタリは出やすいです。
しかし、底潮が流れなかったり、向きが逆方向だった場合にはなかなか魚の存在を察知できなくなる。
これを解消するために、潮と船の流れを読んでアタリが出やすい誘いの向きと誘いの速度を探していく、というのが船シロギス釣りの重要なセオリーです。
また、この時に胴突きなのか天秤なのかでアタリ方に差が出てくるのですが、その理由のひとつがハリスの長さの違いです。
東京湾での船シロギスの仕掛けの多くが全長80センチ程度で中間から枝スを出した2本針仕様、一方胴突き仕掛けのハリスは30〜40センチと、天秤の半分です。
結論を言えば「ハリスを張る」という点においては確実に短ハリスが有利なのは明白です。
これにより、元々ハリスの短い胴突き仕掛けの方がアタリが出やすく感じられるのですが、これは天秤仕掛けでも短ハリス化(40〜60センチ程度)してやることで似た効果を狙えます。
また胴突き仕掛けには、途中に天秤を挟まないために、ハリスがどの向きに靡いていても影響が少ないという側面もあります。
まとめ
ということで、今回は船シロギス釣りの仕掛け2種の特徴と使い分けを考えてみました。
このような仕掛けごとの特徴の理解と水中のイメージをしっかり持っておくことが、実釣時の使い分けと誘いのパターンを見つける際に大いに役に立ってきます。
もちろん、誘いやすさは道具(特にロッド)によって変わってきますので、その辺りもトータルで考えていくと更に戦略性が広がって楽しくなっていきますね!
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